山陽堂書店ではメールマガジン配信しています。
配信をご希望される方は件名に「配信希望」と明記のうえ、
山陽堂書店メールマガジン【2020年12月3日配信】
みなさま
こんにちは。
僕は寒いのが苦手で、乾燥肌でもあります。
2、3年前だったか、冬の日ある日。
友人のSが僕の手を見て声を震わせながら言ったことがあります。
「これは...おじいさんの...おじいさんの手だよ」
彼は泣きそうな声で憐れむような表情を浮かべていたのですが、
こちらが彼の目をじっと覗き込んでいると正体を明かし、
「ちょっと笑っちゃってるから」と指摘すると、
Sは途端に大きく笑いました。
自分の手がちょっと荒れはじめると思い出すワンシーンです。
さて、本日は山陽堂書店オリジナルマグカップ 第3弾発売のお知らせです。
〈マグカップ第3弾〉
和田誠さんデザインによる山陽堂書店のブックカバーから生まれたオリジナルマグカップ。
第3弾は「風見鶏」「スフィンクス」「ぞう」の3種類を発売します。
「風見鶏」
「スフィンクス」
「ぞう」
12月中旬に発売を予定している第4弾「自由の女神」「蛍の灯火、雪結晶」の2種類を加えて全8種類が揃う予定です。
第1弾の「孤島漫画」「ふくろう」は現在完売しており、こちらも12月中旬に再入荷予定。
第2弾の「キング&クイーン」は販売しております。
郵送でのご購入方法等詳しくはこちらでご確認ください。
https://sanyodo-shoten.co.jp/news/2020/09/-1.html
原宿駅の旧駅舎のてっぺんには風見鶏があり、いまも柵越しにですがチラリと見えます。
マグカップができるまではあまり意識したことがなかったのですが、ずっといたのですね。
そういえば、原宿駅の他で風見鶏を見たことがないぁなんてことも思いました。
来週12月7日(月)からタダジュンさんの展示が始まります。
「嬉しいなぁ楽しみだなぁ」と、心に何度も言葉を重ねてしまうほど楽しみです。
今日の追伸は「七五三(前編)」です。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた来週のメールマガジンで。
山陽堂書店
萬納 嶺
追伸
11月の頭、夜のランニングから戻ると携帯電話に友人Sからの着信があったことを知らせる赤い文字。
あまり良い予感がしなかったので、直感を信じ折り返さずに電話を置く。
3日後。
所用を終えてから携帯電話を確認すると、再びSからの着信履歴。
メッセージは届いておらず、電話でのみ連絡してくるというのは怪しい。
「やめておけ」という心の声に従い、折り返さずに電話を置く。
数日後。
そろそろ大丈夫だろうと、Sに電話する。
「S、元気かい?」
「うん、元気だよ。まんのうくん、全然電話くれなかったね」
「そうなんだよ、嫌な予感がしたから。でももう用事は済んだろうと思って」
「まだこれからだから大丈夫だよ」
「まだ大丈夫なの?」
「うん、間に合うよ」
「まだ間に合っちゃうの?」
「うん、あのね、まんのうくんにR(Sの娘)の七五三の写真を撮ってもらおうと思ってるの」
「思ってるの、じゃなくてさ。S、それ僕がすることじゃないと思うんだけど」
「でもYちゃん(Sのワイフ)が、結婚式のときにまんのうくんか泥棒みたいな人がカメラ持ってたって言ってるんだよね」
たしかに結婚式や旅行など、友人が集まるときにはカメラを持参し、みんなのことを撮っている。
SとYちゃんの結婚式の日もそうだった。
その日の2次会ではごり男にカメラを預けていたので、Yちゃんの記憶はいずれにしても正しい。
とはいえ、だ。
「S、あのね。僕が使っているのはデジカメだし、求められている程のものは撮れないよ。だからね」
「でもYちゃんがまんのうくんに頼もうって言ってるから」
SとYちゃんの力関係は付き合った当初から変わらず(それがうまくいっている証でもある)、Sは言われたことをただそのまま伝える。
「まんのうくんでいいんじゃないかって」
(まんのうくん「が」じゃないんだね、と心に思いながら)
「S、いい?七五三は特別な日でしょ?」
「うん」
「それをね、ハレの日のその写真をね、素人の僕に任せようっていうのはおかしいでしょ?」
「うん、でもYちゃんがね」
「それはわかったよ」
Sの言葉を遮って続ける。
「Yちゃんにね『まんのうくんの持っているカメラはデジカメで、撮る写真も素人の域を出ません』って伝えて。わかった?言えるね?』
「うーん、言えるかなぁ」
「言えるかなぁじゃなくてね、R(Sの娘)にとって一生の思い出になるわけでしょ?プロや良いカメラ持っている人に頼んだ方が絶対良いから」
「うーん、わかった」
翌日。
Sからメッセージが届く。
「11月23日でお願いします!」
Sよ、昨日のやり取りを経て何をどうしたらそうなるのだ?
なぜスケジュールの調整に話が進んでいる?
電話をかけて前日と同じことをSに説明する。
Sの背中越しに「まんのうくんで大丈夫だよ」というYちゃんの声が聞こえる。
「うちの両親もくるんだけど、七五三のあとにみんなでかに道楽行くことになってて、まんのうくんも一緒に」
「行かねーよ」
数日後。
「何故かに道楽だけしか断ることができなかったのか」と自問しながら、
家電量販店でポートレートに適したカメラについてひと通り説明を聞く。
店を出てから「とりあえずまぁ」と思って電話をかけた。
(「七五三(後編または中編)」につづく...)