2021年3月11日
山陽堂書店メールマガジン【2021年3月11日配信】
山陽堂書店ではメールマガジン配信しています。
配信をご希望される方は件名に「配信希望」と明記のうえ、
山陽堂書店メールマガジン【2021年3月11日配信】
みなさまこんにちは。先日ローカル局のラジオ番組で少しだけ話す機会がありました。出演に際して曲をふたつかけてもらえるということで、ひとつはいつも3階喫茶でかかっている曲、
もうひとつは山崎まさよしの「僕と不良と校庭で」をかけてもらうことにしました。
中学3年生だった年の、ちょうど今頃によく聴いていた曲です。
中学卒業と高校入学を前に、淋しさと不安と期待とがごちゃ混ぜになっていたあの頃。
もう15年以上経ちますが、曲を聴くと当時の心境が鮮明に蘇ってくるのが不思議です。
さて、今日紹介するのは現在当店2階ギャラリーで展示をしているこちら。
『響け、希望の音 東北ユースオーケストラ 活動のあゆみ』田中宏和・フレーベル館
当店でご購入いただくとこちらのTYOオリジナル栞が特典として付きます。
https://www.froebel-kan.co.jp/book/detail/9784577049303/
「被災した子どもたちの音楽をすくいたい」音楽家・坂本龍一氏の願いから生まれた東北ユースオーケストラ(TYO)。
東北の被災3県(岩手・宮城・福島)の小学4年生から大学生までのメンバーで編成されたTYOのこれまでを、
TYO事務局長を務める田中宏和氏が綴ったノンフィクションです。
第一楽章から第四楽章までで構成されている本書は、
「こどもの音楽再生基金」から発展する形でTYOが生まれたことから始まり、はじめての演奏会に向けて動き出したTYOの様子、
活動が続くなかで生まれた「TYOはなんのために演奏するのか?」というメンバーに生じた迷いや葛藤、
そしてTYOがつくる・つなぐ未来についてが綴られています。
TYO全体を大きく見る目と、メンバーそれぞれを細やかに見る目、田中さんの両面がその内容から感じられます。
各楽章の合間には、間奏曲として3人の被災体験が記されているのですが、それぞれ本人が書いたようにも思える文章は田中さんが聞き書したものだそうです。
「この内容(体験)を自分で書くにはかなり筆が重かったのではないか」と、読んでいて思った疑問もそれで合点がいきました。
田中さんがメンバーから信頼されていることがわかります。
3月1日から始まった展示では、一部の時間ですがTYOメンバーが当番制で在廊してくれ、
来場されたお客様に展示内容の説明をしてくれています。
当番が終わると3階喫茶で好きなものを注文してもらい少し話をするのですが、
短い会話のなかでもTYOが彼らにとって大切な存在で、たくさんの良い出会いがあったことが伝わってきます。
(僕もこれまでのサッカーのチームメイトに会いたくなってしまいました)
彼らの口からはTYOに携わる大人たちへの感謝の言葉も聞かれます。
発足時から在籍しているというある男の子は、歳を重ねてよりその有り難みやすごさがわかったといいます。
「被災した子どもたちの音楽をすくいたい」という当初の願いのもとに、
坂本龍一氏や田中さんはじめとする多くの関係者がTYOメンバーに見せてきた「大人」の姿は、
これから彼らがどのような「大人」になり、どのような「未来」をつくっていきたいかという指標のひとつにもなったのではないかと思いました。
田中さんとは3年前にお会いしてから酒席をご一緒させてもらったり、
自転車で狛江に向かっているときに成城学園前の路上でばったり会ったりする仲です。
(「ばったり会う仲」があるのか知りませんが)
博識で物腰柔らかく、ユーモアもあって、「余裕のある大人ってこういうことなんだなぁ」と毎回お会いするたびに思います。
展示は今週13日まで。
田中さんが在廊してくれていることもあるので、もしタイミングがあったらお話をしてみてください。
展示期間中の催しとして田中さんが考えてくれた「音漏れ演奏会」の3回目が本日14時頃からあります。
2階または3階でTYOメンバーに演奏をしてもらい、開いた窓から聴こえる音楽を聴いてもらおうというものです。
もしお近くお通りの際に音が届きましたら、しばし耳を傾けてみてください。
それから。
︎児童向けということで、田中さんは「わかりやすさ」に重きをおいた構成にし、慣れていないという「一人称」で書かれました。
執筆時に苦労したことなどが執筆記としてnoteにまとめられていますので、よろしければこちらも是非読んでみてください。
本には載っていない田中さんの熱い思いも知ることができます。
(https://note.com/tanakahirokaz/n/n4ace55bbc1eb)
今日の追伸は「2011年3月14日 朝刊。」です。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
山陽堂書店
萬納 嶺