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2020年11月26日
山陽堂書店メールマガジン【2020年11月26日配信】
山陽堂書店ではメールマガジン配信しています。
配信をご希望される方は件名に「配信希望」と明記のうえ、
sanyodo1891@gmail.com(担当 マンノウ)までご連絡ください。

山陽堂書店メールマガジン【2020年11月26日配信】

みなさま

今日は暖かいですが、寒くなってきましたね。
秋から冬への季節の変わり目には就寝時に。
本格的な冬が訪れてからは昼夜問わず。
腹巻を纏います。
大学時代からの習慣で、当時友人らに腹巻がどれだけ暖かいかを熱く伝えていましたが、
周囲の腹巻人口は変わりませんでした。
腹巻、すごいんですけどね。

さて、今日は今週24日の山陽堂ブック倶楽部(読書会)の課題本だったこちらの本を。
「居るのはつらいよ」東畑開人(医学書院)
2020.11.26.1.jpg
https://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=106574
「ただ、いる、だけ」の社会的価値を僕らは語りづらい。(本文より)

京都大学で博士号を取得後、沖縄の精神科デイケア施設に勤めることになった臨床心理士の著者
社会に「いる」のが難しいメンバーが通うデイケアで、著者はメンバーたちと一緒に「いる」ことを求められます。
居場所型デイケアでは「変わらない」ことも重要視され、体操、運動、遊び、食事など、同じことが繰り返されるのですが、
臨床心理士である著者はその日々に戸惑い悩みます。
成長(変化)を目指すセラピー(治療)の価値と、変わらないことが目指されるケアの価値。
これは簡略化した比較で、全編を通して書かれている話はもっと複雑です。
著者はデイケアでの4年間について綴りながら、「なぜ居るのがつらいのか」「なぜ居ることに傷つくのか」という問題の根元に迫ります。
それはエッセイという形(と思っていると、あとがきでひとつ驚きがある)で軽妙に、
そしてユーモラスに書かれているのですが、読み進めていけばいくほど話はぐるぐると回っているようで、
読み終えると、考えさせられた言葉とわからない箇所で付箋だらけでした。

24日のブック倶楽部では各参加者から理解しきれなかった点なども挙がり、
それを他の参加者の感想や体験した話から理解に繋げられる場面もあり(毎回そうではあるのですが)、
進行役とはいえ一参加者でもある僕にとってもありがたかったです
最後まで読み切っても、読書会でたくさん話をしてもなお、モヤモヤしたものの残る本書ですが、
今回参加されたある方が仰っていた「それが著者の狙いでもあるように思いますね」という言葉の通りなのかもしれません。
モヤモヤし続けて、考え続けること。
個人的には本書のなかでもでてきた「社会的価値」というものについて、もう何年も前からずっと考え続けています。

◇第14回山陽堂ブック倶楽部(オンライン)
課題本:「ナショナル・ストーリー・プロジェクト Ⅰ 」ポール・オースター 編 / 柴田元幸 訳(新潮文庫)
https://www.shinchosha.co.jp/book/245111/
日程:12月22日(火)19時より20時30分頃まで
参加人数:8人
参加費:1,000円
申し込方法:sanyodo1891@gmail.com(担当 マンノウ)宛てに「12月山陽堂ブック倶楽部参加希望」と明記の上ご連絡ください。
〈内容紹介〉
「物語は真実でなければならず、短くないといけませんが、内容やスタイルに関しては何ら制限はありません。
私が何より惹かれるのは、世界とはこういうものだという私たちの予想をくつがえす物語であり、
私たち家族の歴史のなか、私たちの心や体、私たちの魂のなかで働いている神秘にして知りがたいさまざまな力を明かしてくれる逸話なのです。」
(編者まえがきより)

ポール・オースターの呼びかけで全米中からラジオ番組に寄せられた4000通以上の投稿。
文庫版の本書は1・2巻から成り、ほろっとさせられる話や落語にありそうな滑稽な話、
人の理解を超える不思議としかいいようのない話など選りすぐりの約180話が収められています。
12月の山陽堂ブック倶楽部では、1巻のみを課題本にします。
参加者それぞれが気に入った話やその感想などをお話しください。

〈郵送販売について〉
ご注文方法等詳しくはこちらよりご確認ください。
https://sanyodo-shoten.co.jp/news/2020/05/post-188.html

〈お知らせ〉
出版社数社と朝日新聞社による人文書の魅力を伝えていくプロジェクト「じんぶん堂」のサイトにて、山陽堂書店を取材していただいた記事がアップされました。
取り留めなく話しをしてしまいましたが、プロのライターさんによりきれいにまとめていただきました。
(プロはすごいです)
https://book.asahi.com/jinbun/article/13947151

今日の追伸は「悩みがなさそうな人」です。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた来週のメールマガジンで。


山陽堂書店
萬納 嶺

追伸

「お兄さんは悩みがなさそうね」
ちょっとした集まりで偶然その場に居合わせる状況になり、
始めた雑談の早々にひと回りちょっと人生の先輩と思われる女性の方から冒頭のひと言を頂いた。
「あぁ、なんかそういうのってマスク越しにも伝わるんだなぁ」ということをまず思い、
束の間「まてよ、たいへんアホそうということなのではないか」という不安が襲った。
「悩みたくさんありますよ!」なんてその数を訴えたところで更にアホそうなので、
「そう見えますかねぇ」と苦笑いで返すと、「まぁそう見える人にも悩みはあるからね」と、
女性は自ら投げた話を結局ひとりでまた手元に収めた。

20代の時に一番悩んだのは、働くことや自身の価値(価値観)についてだった。
学生でなくなってから、というよりはもう少し正確に遡ってみると同級生が就職活動を始めた頃から、周囲の価値観と自分の価値観が離れていくのを感じていた。
学生時代はまだしも、みんなが社会人になり働きはじめて何年か経った頃は、
それがもう分かり合えないところまできているような気がして、
そして自分がいまからみんなに寄せていかなければならないような気もして、とにかくつらかった。
(この頃の1、2年間の記憶はほとんどなく、覚えていることも断片的で曖昧だったりする。)

当時自分が大事にしたいと思っていたこと(感覚)はあまりに限定的すぎて、
それは社会の中では如何様にも当てはめにくいものだったなと、いまなら思うことができる。
友人との余暇の時間で満たすべきことのひとつだといまはわかる)
では当時の価値観を否定して、それはどこかに置いてきたのかというと、そうでもなく。
そのときのもの(感覚)がもっと大きなものとなったから、僕は家業を継ぐことを選択したといえる。
ここに書ききれないことや記憶から消えてしまっているたくさんの紆余曲折もあったけれど)

学生時代も働き始めてからも、ここは変わらず斜陽産業。
組合の青年部に顔を出すようになってからは、自店だけでなく本屋そのものの社会的価値についても考えてしまう
「僕らは本当に必要な商いなのだろうか?」
業界全体のことを考えても、自分のお店のことを考えても、悩みや将来への不安は常にある。
それでも、出会って間もない人にそれが伝わらないくらいには明るくいられているのだとしたら、自分が家業を継いで次の世代に手渡すということにもう迷いがなく
本屋という商いについて、その価値への確信を少しずつ積み重ねているところだからかもしれない。
そうであれという願いも込めて。
2020年11月18日
山陽堂書店メールマガジン【2020年11月18日配信】
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配信をご希望される方は件名に「配信希望」と明記のうえ、
sanyodo1891@gmail.com(担当 マンノウ)までご連絡ください。

山陽堂書店メールマガジン【2020年11月18日配信】

みなさま

こんにちは。
今週は山陽堂ブック倶楽部(読書会)の12月課題本を紹介します。
本に収められているのは全米から寄せられた実話の数々。
「ナショナル・ストーリー・プロジェクト Ⅰ 」ポール・オースター 編 / 柴田元幸 訳(新潮文庫)
2020.11.19.1.JPG
https://www.shinchosha.co.jp/book/245111/
「月に一度ラジオ番組に出演して物語を語っていただけませんか?」と打診されたポール・オースター。
(ポール・オースター:『ガラスの街』『幽霊たち』『鍵のかかった部屋』のニューヨーク3部作などで知られるアメリカの作家)
自分の仕事をこなすだけでも精一杯と、当初乗り気ではなかったものの、妻 シリのアイデアを聞いて考えが変わります。
「リスナーから物語を集めれば良いのよ」
ポール・オースターは NPR(全米公共ラジオ)のリスナーに呼びかけました。

「物語は真実でなければならず、短くないといけませんが、内容やスタイルに関しては何ら制限はありません。
私が何より惹かれるのは、世界とはこういうものだという私たちの予想をくつがえす物語であり、
私たち家族の歴史のなか、私たちの心や体、私たちの魂のなかで働いている神秘にして知りがたいさまざまな力を明かしてくれる逸話なのです。」
(編者まえがきより)

こうして全米中の市井の人たちから4000通以上の投稿が寄せられました。
ポール・オースターはそのすべてに目を通し、おもしろかったものをラジオ番組で朗読。
多岐にわたる内容に、ポール・オースターは「アメリカが物語を語るのが私には聞こえた」と語ります。
文庫版の本書は1・2巻から成り、ほろっとさせられる話や落語にありそうな滑稽な話、
人の理解を超える不思議としかいいようのない話など選りすぐりの約180話が収められています。

12月の山陽堂ブック倶楽部では、1巻のみを課題本にします。
参加者それぞれが気に入った話やその感想などを話してもらう予定です。
また、2020年を振り返り、個人的に嬉しかった出来事や日常のちょっとした出来事などを聞かせていただけたらなとも思っています。
僕はスーパーなどでの会計時に目を合わせて「ありがとうございました」と言われると、
「このレジに並んで良かったわ」と思うのですが、日々のそんな些細な「何か良いこと」でもなんでも。
ちょっとした話で心持ち良く今年のブック倶楽部を締めくくれたらと思います。
日程は決まり次第また改めてお知らせ致します。

〈郵送販売について〉
ご注文方法等詳しくはこちらよりご確認ください。
https://sanyodo-shoten.co.jp/news/2020/05/post-188.html

〈GALLERY SANYODO展示〉
現在開催中のこちらは明日19日(木)17時まで。

◇「みぬくま」展 志岐奈津子×ナイトウカズミ
志岐奈津子(ライター)とナイトウカズミ(イラストレーター)による二人展。
会場内では「みぬくま」の絵・フェルト作品を展示し、物語「みぬふりのくま」の朗読音声が流れます。
閉店後の山陽堂書店ではクマたちがこのように過ごしている?
見ずにいただけで、もしかして営業中もこうしている?
山陽堂書店の本棚を眺める楽しみがひとつ増えました。
(僕自身も文庫棚から選んで買うことがあるので。)
展示について詳しくはこちらよりご確認ください。
https://sanyodo-shoten.co.jp/gallery/schedule.html#1096

今日の追伸は「何か良いことないかなぁ」です。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた来週のメールマガジンで。

山陽堂書店
萬納 嶺


追伸

月曜日に行った渋谷らくごのトリは僕の好きな瀧川鯉八師匠だった。
演目は「ぷかぷか」という新作落語。
(瀧川鯉八師匠が高座にかけるのは古典ではなく、ほぼ新作の創作落語。)
「なんか良いことないかなぁ〜 なんか良いことないかなぁ〜」と主人公が歌うように口ずさみながら歩いているところから噺は始まる。
主人公のおかしな様子を、目と耳から入れて頭の中で映像にする。
「頭に浮かべているこの画をあとで思い出したら笑っちゃいそうだな」
そんなことを考えながら思い出してしまったのが、先日の結婚式で久しぶりに会った後輩に言われた言葉。

その後輩には1年ほど前に偶然まちで会っていた。
「あのとき会った以来だよね」
「そうですね。でもその前にもまちでまんのさんのことお見かけしたことがあったんですよ。でも声かけられなくて」と言う。
「(僕が)自転車乗ってた?」
「いや、なんかおひとりで歩いてたんですけど、ちょっとニヤけてて、声かけられなかったです」
「・・・」
確かにそれは、声をかけたくない。
知り合いだと、思われたくない。
僕もその人、苦手だ。
閉口して何も返せずにいると、中山くんが「やっぱお前まずいな」とトドメを刺すように言った。

たぶん僕はそのとき何か良いことがあったか、過去にあった良いこと(おもしろいこと)を思い出していたか、
あるいはちょっとしたイタズラを思いついていた可能性が考えられる。
機嫌が良かったことはよしとしても、公共の場でひとりでいるときに緩めるべきでないものについては今後留意しなければならない。
鯉八師匠演じる「なんか良いことないかなぁ〜 」と口ずさみながら歩く人とは一線を画していたい。
あろうことか「ぷかぷか」の主人公の名が「まんたろう」だったこともあり、余計に強くそう思った。
2020年11月12日
山陽堂書店メールマガジン【2020年11月12日配信】
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sanyodo1891@gmail.com(担当 マンノウ)までご連絡ください。

山陽堂書店メールマガジン【2020年11月12日配信】


みなさま

こんにちは。
先週末の結婚式はとても良かったです。
新郎は大学時代の2つ下の後輩(ごり男の1つ下)で、パッと見のサイズ感はゾウのよう。
「動物を飼いたいって感情がないんだけど、ごり男や○○(新郎の名前)がいるからだと思うんだよね」
「まぁそういうことだろうね」披露宴で隣に座った中山くん(僕の同級生)も同じ考えのようでした。
ということで(って、どういうことなんだか)、先週に続き今週も動物が主人公の本をご紹介。

「ジェンと星になったテリー」草野あきこ 作 / 永島壮矢 絵
2020.11.12.1.JPG
https://www.iwasakishoten.co.jp/book/b493105.html
主人公のぼくはユイの家に暮らすゴールデンレトリバーのジェン。
前に暮らしていたテリーは空の遠くにいってお星になったといっていたけれど、
みんなが会いたいって心に思うと現れる。
「もうぼくがこの家の犬なんだけど」
知らん顔して家族のそばにいるテリーに吠えたら、ぼくがママにしかられちゃった。
おやつを食べているときも、ボールで遊んでいるときもぼくはテリーとくらべられる。
テリーはぼくのじゃまをしにきたの?
そう思っていたけれど...
ジェンはなにに気づいたのでしょう?

この本の原画展があす11月13日(金)から山陽堂書店からもほど近いOPAギャラリーで開催されます。
これまで永島壮矢さんが描かれてきた書籍の装画も合わせて展示される予定です。
永島さんとは僕がOPAギャラリーで設営の方法を勉強させてもらっていたときに知り合いました。
機敏そうな体つきだったので、「何かスポーツを?」と訊いてみたところ、野球をされていたとのこと。
「守備うまそうですね!」と、考えるより先に思ったことを伝えてしまった記憶があります。
展示情報詳しくはこちらをご覧ください。
http://n-soya.com/?p=1991永島壮矢さんHP)

OPAギャラリーHPはこちら。
http://opagallery.net/


〈郵送販売について〉
ご注文方法等詳しくはこちらよりご確認ください。
https://sanyodo-shoten.co.jp/news/2020/05/post-188.html

ちなみに。
ごり男は仕事の関係で止むを得ず新調したスーツの納品が結婚式に間に合わず、
「ほんまふざけてます」と、ぷんすかしてました。
ごり男の「ぷんすか」を見られて僕たちは楽しかったです。
今日の追伸は「結婚式が好き。」です。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた来週のメールマガジンで。

山陽堂書店
萬納 嶺


追伸

結婚式はおもしろい。
新郎新婦のふたりがどんな家族のもとで育ち、どんな友だちと時を共にし、そしていまに至っているのか。
出席した人たちの様子を見ながらそんなことを考えて楽しんでいる
どういった人生を歩んできたかはお葬式に表れるとはよく聞くけれど、
結婚式にもこれまでの人生の歩み方が表れると僕は思っている。
どの挙式も披露宴もだいたいすることは変わらないけれど、それでもやっぱりひとつひとつ印象は異なる。
人を大切にしてきた人の結婚式というのは会場全体を覆う"祝福感"が特別大きい。

先週末の結婚式も特別に良かった。
新郎は大学時代の2つ下の後輩(ごり男の1つ下)。
訥々としゃべり、感情表現も豊かなほうではなく、一見無愛想な新郎。
ただ、言葉や表情は少なくとも、僕らへの好意的な?サインはなんでなんだか、じんわりと伝わってくる。
そんな彼の不思議な力(魅力)に、出会ってきた人たちは惹きつけられているのだと思う。

壇上の神父の言葉で一同が後ろを振り返る。
チャペルの扉が開き、白いタキシードの新郎が登場。
新郎側の席から上がった笑い声は新婦側にも伝播し、新郎の入場曲はバイオリンやフルートの生演奏から笑い声に代わる
「きょうは楽しくなるなぁ」と、僕も笑いながら心に思う。

受付で祝儀を渡し、もらった席次表に目を通す。
僕らのコミュニティ(サッカーサークル)から披露宴に招かれたのは、新郎の後輩が4人、同級生が3人、僕たち先輩が7人。
コロナ渦で人数を抑えたにも関わらずひとつのコミュニティから14人呼ぶこともおかしければ、
その内訳で先輩が一番多いというのもなかなかなことのように思え、席次表をみて笑ってしまう。
(もちろん全体でみれば同級生が一番多かったのだろうけれど)

始まった披露宴では無表情に無表情を重ねたような新郎の様子に笑わされ、
親族席に回ってきた新郎と握手した手をなかなか離さない嬉しそうなおじいちゃんや、
「うちの子がまぁ、もう、ほんとうに、もう」と口にせずとも様子から滲み出てしまっているお母さんの姿が愛らしかった。

最後の挨拶は機械かと思うほど棒読みで、「あいつらしいわ」と僕らはまた笑わされてしまう。
披露宴会場を出る間際、彼を選んでくれた花嫁の彼女に感謝の気持ちでいっぱいだと隣の中山くんに伝えたところ、
それは奴の親御さんがすることだからとりあえず今日お前はしなくていい」と返される。
週の半ばを迎えたいまも尚、結婚式の余韻で心のどこかがぽわっとしている。


2020年11月 5日
山陽堂書店メールマガジン【2020年11月5日配信】
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山陽堂書店メールマガジン【2020年11月5日配信】

みなさま

こんにちは。

「検温のため手首をお見せください」といわれ、
手をグーにして両手首をくっつけて差し出しだした、ごり男。
「なんでお縄を頂戴されにいってんだよ」
なかやん(僕の同級生)から泥棒じゃねぇんだからとツッコまれ、
「すいません、どっち出せばいいかわかんなくって」と恐縮する、ごり男。

以上、ごり男の近況報告でした。
(ごり男:萬納の大学後輩・メールマガジンに度々登場)

ゴリラのお話はさておき、本日はクマのお話を。

「みぬふりのくま」志岐奈津子
2020.11.5.1.JPG
私は見ぬふりをしてきました。
私に理解できないものは私には扱えないもの、扱えないならば、手元に引き寄せる必要はない。
だから、見なかったことにして、私の中からその存在をそっと消し去ってしまおう、子どものころからそう思ってきました。
(本文冒頭より)


長いこと見て見ぬふりをすることで保たれていた「私の心の中の安寧」。
ひとつひとつを考えてはいられない。
かつて書店でのアルバイト中に"あれ"と出会ったときにも「私」は見ぬふりをしました。

時が経ったある日のこと。
大きな交差点の一角にある交番の前で人を待っている「私」はこんな会話を耳にします。

「本の活字は森のざわめきに似てる。それを読む人間たちの感情は木の実の味がする」
「あぁ、それで」
「それで、その森を追われたクマたちは、文庫本に棲むようになった」

蘇ってきた書店でのアルバイト時代のこと。
「この近くに書店がある」と思った「私」は、
自分が立っていたモザイクタイルの壁が交差点の角に立つ書店の壁だと気づき中へ入ります。
中二階に上がり、何冊目だったか。
文庫の棚から手にした本を開いたところにくつろいだ様子のクマが
いままで見ぬふりをしてきたクマに声をかけると...
文庫本に棲むクマとは果たして?

今回の展示のために志岐奈津子さんが書き下ろしたお話の全文は会場にてご確認いただけます。
みなさまのお越しをお待ちしております。

〈GALLERY SANYODO展示〉

◇「みぬくま」展 志岐奈津子×ナイトウカズミ

minukuma.jpg
期間:2020年11月10(火)~19日(木)
時間:平日11-19時(土曜11-17時/日曜定休)※最終日は17時まで。
志岐奈津子(ライター)とナイトウカズミ(イラストレーター)による二人展。
作品の展示を行うとともに、会場に朗読音声を流します。
「みぬくま」は、書店に棲息する小さなクマたち。
いつもは文庫本に隠れている「みぬくま」たちがギャラリー山陽堂で、その姿をあらわします。
そして、もしかすると、山陽堂書店のお店のどこかにも、みぬくまが潜んでいるかもしれません。
詳しくはこちらよりご確認ください。
https://sanyodo-shoten.co.jp/gallery/schedule.html#1096


今日の追伸は「ごり男と芋焼酎のお湯割り」です。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた来週のメールマガジンで。

山陽堂書店
萬納 嶺


追伸

池袋での所用を終え、呼び出したごり男と駅近くの一軒に入る。
「ごり男さぁ、金曜日の夜に俺とふたりで飲んでるって大丈夫かよ?」
席に着くなり注文より先に問うと、
「いやぁ、それそのまんまお返ししますよ」と、ごり男。
「・・・まぁそうだな。今日は寒いから芋(焼酎)のお湯割りにするわ」

今年ここまでの反省をお互いに述べながら杯を重ねていると、ごり男が決心したように言った。
「なんかこうなったら、まんのさんにはロシアの人とかと結婚して欲しいです」
こうなったらってどういうことなのだろうか?
ごり男のなかで俺は今どうなった状態なのだろうか?
言葉とか通じない方が都合良かったりするかもしれないってこと?」と返すと、
「言葉はそうですね、まんのさんにはもう必要ないかもしれないですね」と、ごり男。
何故俺は慣れ親しんできた言葉をごり男に奪われかけているのだろうか?
ごり男は俺をゴリラに寄せていこうとしているのだろうか?
ごり男の言葉が続く。
「まぁ外国人とかじゃなくても、それくらいのインパクトがないと俺たちもどうしたら良いかわかんないです」
インパクト?何故俺の人生はごり男にインパクトを求められているのだろうか?
「俺たち」とは一体誰を代表した言葉なのだろうか...

よくわからないこともほとんど訊かないくらいがちょうど良さそうな秋の夜長。
ごり男の話は芋焼酎のお湯割りによく合った。

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