みなさま
こんにちは。
お元気でしょうか。
喫茶店やカフェではなかなか主役にはならない存在を取り上げた本がありました。
「コーヒーゼリーの時間」木村衣有子(SHC)1,400円
メニューに加えないという選択肢もありながら、たとえ下位打線でも根強く名を連ねるコーヒーゼリー。
ベローチェでいえば、ソフトクリームに主役譲ってない?というコーヒーゼリー。
本書では東西の喫茶店・カフェで提供されているコーヒーゼリーが、その特徴やこだわりとともに紹介されています。
どのお店でも一番人気ではないとされながら、妙にこだわりをもってつくられる各店のコーヒーゼリー。
同じコーヒーゼリーでも、味、かたさ、余韻と追求しているものは千差満別。
本書のユニークなところは、一番手ではない(上位にも食い込まない)"コーヒーゼリーについての話"を通して、
お店全体のこだわりや姿勢が垣間見えるところにもあります。
コーヒーゼリーを大切にしているお店は信用していいのではないかと思わせます。
では、山陽堂書店3階喫茶の珈琲ゼリーはどうなのかというと。
それはいつかみなさんに食べていただき、ご判断を委ねたいと思います。
(と、申しておきながら3階喫茶は現在休業中。悪しからず...)
ちなみに、カフェと喫茶が異なるように、「コーヒー」と「珈琲」もなんとなく分けて考えています。
〈今週のおすすめ〉
遊泳社の辞典三冊 (遊泳舎HP参考)
3冊ともB6版の小ぶりなサイズ、装幀にもこだわった贈り物にもおすすめの辞典です。
(山陽堂書店 遠山秀子)
◇「ロマンスの辞典」望月竜馬 著 / Juliet Smyth 絵 1,600円+税
言葉の魅力をより引き出すイラストもたくさん収録された、時に切なく、時にキュンとする、ロマンチックな辞典。
◇「悪魔の辞典」望月竜馬 著 / Juliet Smyth 絵 1,600円+税
アンブローズ・ピアスの『悪魔の辞典』を原案に、500単語を悪魔的視点で書き下ろし。 150点を超えるユーモアたっぷりのイラストを収録。文字とイラストの両面から人間の本質を問う、問題作。
◇「言の葉連想辞典」 あわい絵 / 遊泳舎編 1,800円+税
「思わずグッとくる、洗練された言い回しを知りたい」
「心が洗われるような、美しい日本語を味わいたい」
語彙力を磨きたい大人や、表現力を磨きたいクリエイターにもおすすめの、インスピレーションを与える一冊。
郵送販売についてのご案内はこちらよりご確認ください。
今日の追伸は、「冷蔵庫のコーヒーゼリー」です。
今週も最後までメールマガジンお読みくださりありがとうございました。
山陽堂書店
萬納 嶺
山陽堂書店の現店主である祖母は今年88歳になった。
いまお店には立っていないので、毎日顔を合わせることはないけれど、
時々実家に寄って会ったり、電話で連絡をとっている。
自宅ではマスクを縫ったり、三味線の練習をしたりしているという。
「最近もぐるぐるまわってるの?」と祖母。
それだけ聞くと『いつまでも見つからない探しものをしている人』みたいな言い方だなと思いながら、
天気の良い日はだいたい走っているよと答えて、珈琲ゼリーを作ったら持って行くことを約束する。
僕ら孫たちがまだ小学生だった頃、祖母がつくってくれたおやつのひとつがコーヒーゼリーだった。
インスタントコーヒーにゼラチンを混ぜてつくるシンプルなものだったと思う。
コーヒーゼリーにスプーンをのせると少し返ってくるような、しっかりした固さのゼリーだった。
コーヒーゼリーが特別好きだったのかというと、どうだったろう。わからない。
それでも「つくって!」とお願いしたこともあったように思う。
コーヒーゼリーをつくるときのガラスの入れものはいつも決まっていて、
カクテルグラスより大きな、草花の模様の厚みのあるものだった。
学校から帰って冷蔵庫を開けると、冷やされたコーヒーゼリーが入っていて、
苦いのは嫌だったからガムシロップとクリームをたくさんかけて食べていた。
「あとで食べて」と、瓶に入れた珈琲ゼリーをしまおうと冷蔵庫を開ける。
ここなら目に入るかなと、真ん中より少しだけ右に置く。
祖母もたぶん、そんなふうにしてコーヒーゼリーを置いてくれていたのだと思う。