#
ブログ
TOP >ブログ > 山陽堂書店メールマガジン【2020年6月11日配信】
2020年6月11日
山陽堂書店メールマガジン【2020年6月11日配信】
山陽堂書店ではメールマガジン配信しています。
配信をご希望される方は件名に「配信希望」と明記のうえ、
sanyodo1891@gmail.com(担当 マンノウ)までご連絡ください。

山陽堂書店メールマガジン【2020年6月11日配信】

みなさま

こんにちは。
いかがお過ごしでしょうか。

先日、友人から第一子誕生の連絡がありました。
営業再開した百貨店勤務で忙しいだろう彼に代わり、といってはなんですが、今度会った時に話そうと思って読んだのがこちら。
『胎児のはなし』増﨑英明・最相葉月(ミシマ社)1,900円+
2020.6.11.1.JPG
医師である増﨑先生が長崎大学病院にある超音波診断装置で生きている胎児を初めて見たのが1977年。
それから40年以上、産婦人科医として第一線に立ち続けてきた増﨑先生は、胎児のことを研究し続け、
妊婦と胎児を取り巻く環境の変化を目にしてきました。
ライター・編集者である最相葉月さんを生徒に、これまでにわかったことや進歩した診断技術による功罪についてが対話形式で語られます。
増﨑先生という人物を物語るようなこともいくつか書かれていて、
「胎児っておしっこどうしているのだろう?」と、10時間も連続して胎児を観察。
よくそんなに排尿を見ていられるなぁと思いますが、
「イヤというほど見たでしょ、そうするとね、そろそろおしっこするぞーっていうのがわかるんです。」と先生。
そして、1日に約700ccも出すとわかったものの、今度は出されたものはどこにいくのかという疑問が生じ、それは胎児自身が飲んで減らし、
一部は臍帯などを通してお母さんが処理していると考え至ります。(※完全には証明できていないとのこと)
本文は口語調なので、先生のユニークなキャラクターがより伝わってきます。
(ちなみに、最後は「先生申し訳ありません、トイレ行かせてください」と妊婦さんに言われて、はっと気がつき観察を終えたそうです。)

「妊娠は楽しまなくてはいけない」と考える先生ですが、出生前診断、そして優生学という倫理観にも関わることに話が及ぶと、
「楽しいばかりじゃないからやめましょう」という言葉がでます。
しかし、ここで生徒 最相さんは「いや、読者にはきっと、リアルタイムでそれに直面している人もいると思うのであえてそちらにいきたいと思うのですが、」
と話を進め、質問を続けます。
そこから続く先生と最相さんの話にまた、読者への誠実さを感じました。

この本を読んでから友人にどんな話をしようかと考えましたが、
驚きの大きかったことのひとつ
「男(父)と母(女)は胎児(子)を介してDNAで生物学的に繋がる」ということと、
「ふたりが似てくるようなことがあったら、それはそういうことかもしれん」と伝えようと思います。


〈今週のおすすめ〉
今回は本の雑誌社 高野夏奈さんに本を紹介していただきます。
神田神保町には中小の出版取次がいくつかあり、流通のことを何も知らなかった僕を案内してくれたのが高野さんでした。

『つくるたべるよむ』本の雑誌編集部編 (本の雑誌社)1,700円+税
2020.6.11.2.JPG
『つくるたべるよむ』は「料理」&「本」のプロフェッショナルが続々登場のおいしいブックガイドです。食の世界の気になるあの人(久住昌之、鈴木智彦、木村衣有子、水野仁輔)は何を考えているんだろう。フレンチシェフ道野正の珠玉の読書遍歴、児童書の食(高頭佐和子)、許永中の望郷のグルメ(urbansea)、文学賞を支える料亭一代記(川口則弘)。堀部篤史が探る片岡義男らの食、山下賢二は独白の創作を綴る――。料理書専門の町の本屋に、文芸、アート、同人誌のおススメも出揃いました。次々と顔を出す多彩な本、本、本。この一冊でどこまでも読書が広がります。(本の雑誌社 高野夏奈)

『サルデーニャの蜜蜂』内田洋子(小学館)1,700円+税
2020.6.11.3.JPG
「歴史は、無名の人達の小さな歴史が積み重なり連なって成されるものだ。
表に見えてる顔がポピュラーなイタリアなら、底に潜むいくつもの影もまたイタリアである。」(本文より) 
ローマ時代から続く養蜂家一族・代々、本を行商してきた村人。
ともすれば埋もれてしまう記憶をイタリア在住40余年の著者が描く15編のエッセイ。
(山陽堂書店 林美和子)

郵送販売についてのご案内はこちらよりご確認ください。

【営業時間・休業日について】
引き続きしばらくの間 平日10〜17時の営業とさせていただきます。
変更等は店頭・HPなどでお知らせ致します。

今日の追伸は、「愛すべき友人E」です。
今週も最後までメールマガジンお読みくださりありがとうございました。

それではまた来週のメールマガジンで。


山陽堂書店
萬納 嶺

追伸

第一子誕生を知らせる友人Eからのメッセージが届いた。

まんのー!

皆様!

明け方、無事に女の子が産まれました!

こんな状況の中ですが、母子共に健康ですわ!

(後略

 

連続する感嘆符から彼の喜びと興奮が伝わってくる。

僕も友人に子どもが産まれたことは嬉しく、「奴も父親かぁ」と、にやりともしてしまった。

だが、しかし。

文字を追いながらなんともやるせない気持ちも生じ、部長にメッセージを送った。

部長:メルマガ初登場。高校大学の同級生。僕の身に起きた些事から、

元サッカーブラジル代表 フッキが元妻の姪と結婚するという世界的な出来事まで、

幅広く話を聞いてくれる長年の相談役。滋味深き助言や行間に忍ばせるユーモアへの敬意を込めて部長と呼んでいる。)

 

(メッセージを転送し)

僕「部長、Eからこのようにめでたい報告をいただきました。

ただ、名前を呼ばれたから振り向いたのに「皆様」と続き、少々やるせないところもあります。」

部長「さながらまんのくんにそこをどいてくれと言わんばかりですね。グイっと肩を入れられています。」

僕「はい。私はEの声もよく聞こえないまま、ほとんど背中を見ていただけでした。」

 

先述のEのメッセージから僕らが頭に浮かべ共有した情景は以下のようなものだった。


呼ばれて振り向いた僕を押しのけるように通り過ぎ、眼下の聴衆に向かって大きな声で子どもの誕生を知らせる友人E

(彼は両手を掲げてガッツポーズさえ決めている)

そして、彼の背後でぽつねんとしている僕...

 

一斉送信の文言をそのまま使ってくれて(コピー&ペーストだって)構わない。

多くに喜びを伝えているなか個人に連絡をくれただけでもありがたく思う。

ただそれだけに、そしてまた個人名を書き添えてくれたがため余計際立ってしまった「皆様!」が生んだ、やるせなく滑稽ともいえる情景。

子どもの誕生と合わせてそれも記憶しておこう。

Eも高校時代からの友人、彼が愛されるより"愛すべき"人間である証のひとつとして。


最近の記事
アーカイブ
カレンダー
2020年6月
  1 2 3
4
5 6
7 8 9 10
11
12 13
14 15 16 17
18
19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30