中学入学のときに彼は僕らの地元に越して来た。
同じ小学校出身の子も多いうえ生徒数もそんなに多くはなく、同級生はみんなお互いにその存在を知るような環境のなかにありながら、入学してから1年間、彼と言葉を交わすことはほぼなかったように思う。
それが、中学2年のときに同じクラスになり、給食を囲む班が一緒になった頃から仲良くなったように記憶している。
囲碁将棋部の幽霊部員、つまりは帰宅部の彼と、学校外のチームでサッカーをしていた僕は毎日一緒に下校するようになった。
彼は竹下通りを少し入ったところにある自分の家を通り過ぎ、僕の家まで一緒に歩いては、茶の一杯も出されずに玄関先で別れを告げられ、再び来た道を帰る、というのが常だった。
趣味も性格もまったく違う彼と一緒に帰るその時間を、僕はとても楽しんでいた。
どんな話をしていたのかはあまり覚えていないものの、彼のツボにハマった時のあの長い引き笑いと、もっとハマったときにずいぶん呼吸に苦しんでいたときのことはいまもなお覚えている。(あのとき僕らは何の話でそんなに笑ったのだろう)
彼の何に惹かれたのかというと、とにかく"変"だということだった。
特異な言動をするわけでもなく、具体的には説明できないものの、"変なところ"が滲み出てしまっているようなところがあった。
そんな彼と一緒にいて笑い合っていることを当時の担任は訝しみ、「いじめているのだと思います」と僕の母に言ったことがあったという。
(ほんとに、中学時代の先生には何がどう見えていたのか、あるいはまったく何も見えていなかったのか。いまでもとても解せない不思議な方々だった。また悪口になってしまいますね。)
中学を卒業してからは、彼と会う機会がめっきり減ってしまい、地元の集まりで年に一度顔を合わせる程度になってしまった。
それでも、いつ会っても彼は相変わらず彼だった。
時は経ち、お互い30歳になった今年、久しぶりに会った彼は相変わらず変な奴でありながら、おもしろさに磨きがかかっていた。
以前から茶の道に進んだことは知っていたものの、茶人としての彼に接したのはそのときが初めてで、驚きつつもどこか納得し、何より彼がこんなにおもしろいことになっているということが心から嬉しかった。
そんな彼、武井宗道氏(くん)に、10月24日(水)山陽堂書店 3階でお茶を点ててもらいます。(あのとき茶の一杯も出さずに帰したことを根に持つこともなく)
どうぞお気軽に、武井くんとの会話もお楽しみください。
おもしろい、僕の友だちのひとりです。
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