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2020年6月 4日
山陽堂書店メールマガジン【2020年6月4日配信】
山陽堂書店ではメールマガジン配信しています。
配信をご希望される方は件名に「配信希望」と明記のうえ、
sanyodo1891@gmail.com(担当 マンノウ)までご連絡ください。

山陽堂書店メールマガジン【2020年6月4日配信】

みなさま

こんにちは。
お元気でしょうか。
ここ最近の僕はというと。
「私たちにも豆煮たら食べさせてよ」
母からの急な煮豆要求に「え?なんで?」と返してしまいましたが、
配信前のメールマガジンは母らが校閲を担当しており、前回の追伸を受けての言葉でした。
手間が増えるわけでもなく、誰かのためにつくった方が美味しくなるとは思うので、「いつ煮るかわかんないけど」と承りはしましたが、
それにしても個人ではなく「私たち」と、僕を除く山陽堂書店員を代表した声として要求してくるあたり、卓越した話法だなと感じました。
塩茹でや砂糖で煮るほかにひと手間加えた豆料理をつくろうと、
今年3月の「小林カツ代展」でお世話になった本田明子さんの野菜の常備おかず」(2013年・Gakken)を開き
チリビーンズだな」と心に決めた翌々日の今週月曜日、
前々日に本のなかでチリビーンズを指南してくれた当の本田さんが「本ができました」と、6月4日発売予定の新刊を持ってお店を訪ねてくれました。
久々に会えた嬉しさからお喋りモードに入ってしまった山陽堂書店一同の近況やら豆の話にお付き合いいただきました。)
「本田さんちのおかずが美味しい理由」本田明子・Gakken 1,400円+税(6月4日発売)
IMG_0930.JPG
2案候補があった表紙は山陽堂書店も1票投じさせていただいた「肉じゃが」に。
今回刊行された書籍の「はじめに」では、幼稚園児だったある日のお弁当に毎日入っているはずの大好きな卵焼きが入っておらず、フタを開けた途端にさめざめと泣いてしまったというエピソードが紹介されています。(本人は覚えていらっしゃらないとのこと)
毎日食べたいほどの大好きなおかずがその頃からあった本田さんの原体験が、いまのお仕事にも繋がっているのでしょうか。
そんなおかずをより美味しく作るためのコツを本田さんは師匠である小林カツ代さんのもとで背中をみて学んできましたが、そのコツを断言できるものもあれば、判然としないものもあったそうです。
それを突き止めようという趣旨のもと、「ここがコツだ!」とわかったことを紹介してくれているのが本書です。
本の中でそのコツは文字の大きさ、太さ、背景色などでわかりやすく示されていますが、
その言葉が"本田調"(失敬)であることで、そばで言葉をかけてくれているような、より伝わりやすい言葉になっているように思います。
「あとは腹をくくって堂々と作る!」(麻婆豆腐)
「あらよっと!と声に出しながら巻いていきましょう。」(卵焼き)
「きれいな水に豆腐をざぶん!」(肉豆腐)
冒頭にある、おにぎりを握る本田さんの写真をご覧いただければ、直接お会いしたことがなくても、
お名前の通り本田明子さんの明るいキャラクターをお分かりいただき、話される様子も伝わってくるかと思います。
ちなみに書籍タイトルの「本田さんちのおかずが美味しい理由」の「理由」は「ワケ」とフリガナがふられています。
この本にあるこれを作ろうと、いくつか決めているものはありますが、
煮豆よろしく、どこからどんな要求があるか分かりませんので、今回ここに記すことは控えます。

Bookstore AID〉ご報告

まちの書店・古書店をひとつでもなくさないことを目的に始まったこちらのプロジェクトは先週5月29日で受付を終了致しました。

ご協力いただいた皆様のおかげで、4476人の支援者より総額47,548,000円の支援金が集まりました。

支援金と共にいただいた本屋へのメッセージの数々にも励まされました。
どうもありがとうございました。
ご選択いただいたコースの返礼方法等については運営事務局より順次ご案内がある予定です。
どうぞよろしくお願い致します。


〈今週のおすすめ〉

今回はいつも新刊のご案内を持って当店に営業にきてくださる文化出版局の藤波祐介さんに本を紹介していただきます。

『いちじく好きのためのレシピ』福田里香(文化出版局)1,500円+税
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野菜も果物もなんでも一年中手に入るようになった今日、季節感のある数少ない果物がいちじくではないでしょうか。
お店にこれが並ぶといよいよ夏かと思います。
とろっとみずみずしく、上品な甘さ。
そのまま生で食べるひとも多いと思いますが、ケーキやタルトにしてみたり、サラダや生ハムに合わせてみてもおいしい。
また、ドライいちじくだと甘みが凝縮されプチプチとした食感も楽しめます。
本書では生とドライのいちじくを使いながら、さまざまな食べ方から食べごろの見分け方、
保存方法など知られざるいちじくの世界を余すところなく紹介しています。
ちなみにこのプチプチしたものは種ではなく、秕(しいな)という出来損ないの種のカラなのだそう。
漢字で「無花果」と書くため花が咲かないと思われがちですが、じつは果実のなかで密かに咲いている。
その痕跡がプチプチの正体、と知らないことの多いいちじくです。
今でこそミネラルや食物繊維が豊富な健康食物として知られていますが、昔はどこにでもなっている身近ななりものでした。
俳句にもよく使われ(意外、秋の季語)、ちょっと調べただけでも
いちじくをもぐ手に伝ふ雨雫 (高浜虚子)
手がとどくいちじくのうれざま (種田山頭火)
無花果を頒ちて食ふる子等がゐて (山口誓子)
などがあります。
季節を食す。
何気ない日常が、じつは得がたい幸せだったと気づかされる昨今。
そんな幸せを噛みしめて。
いちゞくの熟れしを日曜日とせり (細見綾子)
(文化出版局 藤波祐介)

郵送販売についてのご案内はこちらよりご確認ください。

今日の追伸は、「丘の上のいちじく」です。
今週も最後までメールマガジンお読みくださりありがとうございました。

それではまた来週のメールマガジンで。


山陽堂書店
萬納 嶺


追伸
大学生の時分、夏休みになると僕らはごり男に実家へ帰省するよう促し、同行していた。

(※くんは大学時代の、というよは生涯にわた後輩であることを宣告された人物で、れまでも度々このメールマガジンに登場しています。)

東尾道駅を降りるとごり男のお母さんが車で迎えにきてくれていて僕らが東尾道に滞在する間貸してくれるその車でごり男のおばあちゃん家に向かい、そこで寝泊りさせてもらっていた。

おばあちゃんは丘の上の一軒家に犬と一緒に暮らし、ごり男のことを「ともくん」と呼んだ。連れのひとり(あきらという大男)はそれを聞いて「お前の下の名前、"とも"何とかっていうんだな」と言ったことがあった。

今まで知らなかったということもさることながら、"とも"に続く名前を尋ねる(知る)気のないこの発言。

ごり男の方も改めて下の名前を知ってもらおうという気はないのか、「はい」としか言わなかった。ふたりのやり取りに「こいつらいろいろとさすがだな」と思った記憶がある。


初めて遊びにいった夏、遊んで帰ってきた僕たちが畳で寝転んでいると、おばあちゃんは茶菓子や飲みものと一緒に山盛りのいちじくをだしてくれた。
尾道はいちじくの産地で、農家のひとがつくっている以外に家々の庭でも取れるらしく、ご近所からもらうこともあるようだった。
(丘をくだったところにある無人販売所でも5、6個入って100円や200円という破格の安さで売っていた。)
あきらは寝転びながらひとつふたつ食べて満足し、ごり男は既に一生分食べたらしく、手をつけようともしない。
必然、僕だけが食べることになったけれど、果物好きということもあって一気に食べた。
一度に食べたことのない量のいちじくを食べ終え「ごちそうさまです」と伝えると、
「全部食べたんかいね」と言っておばあちゃんはゆっくりと椅子から立ち上がった。
冷蔵庫から取り出され、「これも食べんさい」と僕らの前に置かれたそれは、さっきも見た山盛りのいちじくだった。
「またいちじくです」
ごり男は状況を解説した。

大学を卒業してから何年かは行けずにいたものの、縁もあってまた尾道に遊びにいくようになった。
レンタカーを借り、宿に泊まるようになったけれど、丘の上にはいつも顔を出している。
大正生まれのおばあちゃんは健在で、僕らが訪ねると「友だちは大切じゃけえ大切にしんさいね」と、ともくんに言う。
歳を重ねるごとに僕らの図々しさは増したのか、スーパーで食べてみたい食材(アコウという高級魚など)を買って来ては、
「煮付けでお願いします」とごり男の母に調理のお願いまでするようになった。

昨年はどうしても都合がつかず、残念ながら遊びに行くことができなかった。
「来年は遠慮なく遊びにいきます」
そう書いて暑中見舞いを送ると、後日お店に荷物が届いた。
ダンボールの中の新聞紙には、丘で採れたいちじくが包まれていた。
たぶんおかわりを用意してくれているから、また遊びに行かなきゃなと思っている。
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