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2021年1月28日
【2021年1月28日配信 メールマガジン】
山陽堂書店ではメールマガジン配信しています。
配信をご希望される方は件名に「配信希望」と明記のうえ、
sanyodo1891@gmail.com(担当 マンノウ)までご連絡ください。

山陽堂書店メールマガジン【2021年1月28日配信】

みなさま

こんにちは。
映像で大相撲を見ることはあまりないのですが、千秋楽の日に寄った実家で久しぶりに見る機会がありました。
いくらか印象に残る取組もあったのですが、一番心に残ったのは幕内力士の取組の合間に流れた「熱海富士のインタビュー」でした。
現役の高校3年生でもある18歳の熱海富士は、3人でのともえ戦による優勝決定戦を制して序ノ口で初優勝。
(大相撲は幕内・十両・幕下・三段目・序二段・序ノ口とカテゴリーが分かれている。と、僕も今回調べて初めて知りました。)
優勝インタビューでは記者の質問を聞いている間は努めて気持ちを引き締めたような表情をしているのですが、
言葉を発する段になると湧きあがるものが抑えきれず、これ以上ないほど満面の笑顔に。
記者の質問に移るとまた表情を引き締めようとするのですが、再び振られて喋りはじめるやこれまた笑顔が弾けてしまう、といった調子。
さっきまで幕内力士を辛口に評していた北の富士さんまで思わず「かわいいね」と"解説"。
世界中のすべての人がこのインタビューを同じ瞬間に目にしてくれるようなことがあるとするなら、そのときだけは束の間の世界平和が訪れるのではないか、そう思ってしまうほどでした。

さて、今日はここまででずいぶん長くなってしまいましたが、本日はこちらの絵本を。
「せかいいちの いちご」作 林木林 / 絵 庄野ナホコ(小さい書房)
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ある日シロクマのもとにカモメが届けてくれた一通の手紙。
「いちご おとどけ いたします。」
一度だけ見たことのある赤い実。
うちにある一番立派なお皿に載せようかしら。
青い海の見える窓辺に飾ろうかしら。
アクセサリーにするのもステキだわ。
どきどきしながら待っていたシロクマのもとに一粒のいちごが届きます。
いちごのまわりをくるりとまわり、うっとり見つめ、そのかおりにつつまれながら、夢の中でもずっと一緒。

次の冬、いちごは2つ届きました。
その次の冬は4つ。
シロクマのもとに届くいちごは年々増えていきました。
でも、その数が増えるほど、何かが減ってしまう...
いちばんおいしかったのは?
「それはね、」

数や経験といったものを重ねていくと、薄れやすいことというのはいくつもありますね。
受け取るものでも、届けるものでも。
ひとついま思いついたものでいうと、自分が喫茶で珈琲を淹れるにあたっては、いつも同じ臨み方であることを心がけています。
いつもいらしてくださる常連の方にも、友人が来てくれたときにも、「慣れないように」気をつけています。

熱海富士があれだけの笑顔を見せたのは、序ノ口での「初優勝」だったからかもしれません。
彼が今後大成するかは、才能や努力などとともに「その喜び」を忘れないこと(慣れないこと)が大切な要素のひとつではないかと思いました。

「せかいいちの いちご」は特装版もあり、既刊のピンク色のほか新たに青色・紺色の2種類が2月中旬頃に加わる予定です。
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特装版(3200円+税)
当店でも特装版のご予約承っております。
先着3名様には特典のポストカードが付きます。
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特典ポストカード

〈郵送販売について〉
当店から直接相手の方へお送りすることもできます。
ご注文方法等詳しくはこちらよりご確認ください。
https://sanyodo-shoten.co.jp/news/2020/05/post-188.html

〈今週のおすすめ本〉
本日は山陽堂ブック倶楽部(読書会)にもご参加くださっている遠藤直幸さんに登場していただきます。
遠藤さんがおすすめしてくれたこともあり、2021年2月の課題本はこちらの書籍に決まりました。

「永い言い訳」西川美和(文春文庫)
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賢明な読書家諸君にとっては常識だと思うが、悪意のない善意ほど厄介なものはない。
「多様性を認めよう」と言いながら、「多様性を認めないやつは悪だ」と言われかねない世の中は、
果たして生きやすい社会なのかといつも思ってしまう。  
「妻が旅行の最中にバス事故で死んだ。そのとき、俺は不倫相手とセックスしてた。」
そういう男の多様な生き方をあなたは認めるだろうか。俺は多分認めないと思う。  
「永遠の愛を誓います」と、結婚式で人は言う。俺はそこに何の意味があるんだろう、といつも思う。
大切なことは「永遠の愛」という幻想にふけることではなく、「つまらない現実」をいかに生きるかを共に考えることだ。  
この小説は奥さんを失った人気作家の男が、その死を通して「家族」というものを再構築していく話だ。
血が繋がっていようがなかろうが、おしつけの善意だろうが何だろうが、
家族ごっこと揶揄されようが、主人公は「家族」というものに時に主体的に、時に仕方なく向き合っていく。  
人は言う。「それは常識です」とか「そういう決まりだから」と。俺はそういうやつを信用しない。  
あなたは、あなたなりの「家族」を作っていい。そして、必ず作ることができる。
キラキラした日常なんていらない。「多様性を認めよう」と講釈を垂れる前にこの本を読んで欲しい。
(遠藤直幸)

遠藤さんは「元芸大生、40代、フリーター日記」というタイトルでブログを書かれています。
現在も続けている尺八の演奏活動や「音楽」のこと、
自らの選択で「フリーター」であることなどが人柄そのままに正直な言葉で記されています。
読んでいて自分が囚われている固定観念(社会通念)について考えました。


本日の追伸はメールマガジン本文の情報量が多かったため、お休みです。
追伸の予告だけ少しばかり。
次号から何編かに渡り(飛び飛びかもしれませんが)、友人の木村くんと行った2018年のロシアW杯旅行記をお送りします。
「W杯いかない?」という誘いに「あぁ、行きたいなぁ。行こう」と答えたところから始まったロシアW杯への道。
試合チケットの入手、移動手段・宿の確保といったロシア前夜から、ロシア滞在中のできごとまで。
たくさん撮った写真と、当時手帳に書いていた日々のメモとを見直し、回想してみます。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた来週のメールマガジンで。

山陽堂書店
萬納 嶺
2021年1月21日
山陽堂書店メールマガジン【2021年1月21日配信】
山陽堂書店ではメールマガジン配信しています。
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山陽堂書店メールマガジン【2021年1月21日配信】

みなさま

こんにちは。
ここ青山に所縁のある著名人のひとりである向田邦子さん。
その没後40年特別イベント「いま、風が吹いている」が青山にあるスパイラルさんで開催されています。

「あ・うん」「蛇蠍のごとく」といった小説作品は読んだことがありましたが、
エッセイは手にしたことがなく、展示に行く前に読んでみようと母に薦められた一冊を読みました。
「霊長類ヒト科動物図鑑」向田邦子・文春文庫
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167901417
書かれているのは、脚本家・作家として多忙な著者が日常のなかで目や耳にして気に留めたあれこれの話。
話が始まって少しすると一行空いて時が遡り、過去を回想したエピソードなどに転じ、またしばらくして話は現在に戻ってきます。
回想される出来事は自身が子どもだった時分の父母や祖母のことが多く、特にお父さんがよく出てきます。
時代を感じさせる昔気質のお父さんの言動は、当事者からしたら大変だったろうなと思ってしまいますが、読んでいて笑えてしまうのは、向田邦子さんがユーモアをもってそれらを書いてくれているからだと思います。
家族だけではなく、知人友人、外国の方なども本には登場するのですが、やはりテレビ・ラジオドラマの脚本家だからでしょうか、「」内に書かれる各人のセリフの数々は目の前で話を聞いているようです。

僕は本のジャンルのなかでエッセイが特に好きなのですが、それは書いた人の声が一番感じられるからかもしれません。
原稿の締切が迫っていても「善は急げ。」と自分に号令をかけて、
つくりたくなってしまった料理をつくるために買い出しに出てしまう向田邦子さん。
いつもとは別のスーパーでの買い物だったり、やむをえず馴染みの美容院さんではないところで髪を整えてもらったことに、「人生至るところに浮気ありという気がする。」という向田邦子さん。
青山でのこと、旅先でのこと、好きだった食べもののこと。
文字を追いながら向田邦子さんのその声が聞こえてくるようでした
と、ここまで書いて本書の解説で作家 吉田篤弘が書かれていた言葉を紹介すると、まるで取って付けたようなのですが。

(前略)これはまったくの独断だが、書棚に並ぶ向田さんのエッセイ集の中で、この本がいちばん向田さんの声を感じる。(解説より)

「いま、風が吹いている」の展示会場には黒柳徹子さんと対談をしている映像が流れていたのですが、向田邦子さんのことはこれまで紙でしか拝見したことがなく、
「もう少しだけ本当の声は聞かないでおこう」と、そこだけは足を止めずに進みました。
自筆原稿、纏っていた衣服、愛用品、旅先で撮った写真などなどが並ぶなか、かっこいいなと特に印象に残ったのは使い込まれた万年筆でした。
会期は今週1月24日(日)まで。
詳しくは下記URLよりご確認ください。
https://www.spiral.co.jp/topics/art-and-event/mukodakuniko

〈郵送販売について〉
ご注文方法等詳しくはこちらよりご確認ください。
https://sanyodo-shoten.co.jp/news/2020/05/post-188.html

おこがましいのですが、向田邦子さんと話をしてみたかったなと思います。
3階の喫茶にきてみてほしかったなと。
せっかちだと自称する向田さんが、ご自宅のマンションから信号をふたつ渡ってきてくれたかはわかりませんが。
でももうそれは叶わず、遺してくれた作品の数々に目と耳を傾けるしかありませんかね。

さて、今日の追伸は僕の知るせっかちな方について。
「コーヒーと煙草」です。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた来週のメールマガジンで。

追伸

「これ何て書いてあるんだ?」
走り書きのメモを手にして家族に訊いている男性。
三代目店主である祖父 和夫がどんな人だったかを表すエピソードのひとつである。
しかし、自分の書いた文字を判読できずに頭を掻いている祖父のその姿を、僕は実際には目にしていない。

ピース缶を携え、四六時中煙草を吸っていたという祖父は、肺がんを患い昭和62年1月に58歳で他界した。
煙草が原因かはわからないけれど、50本入りのピース缶を日に2缶吸っていたというから、まぁそうだろうと思っている。
ただ、戦中戦後を生きた祖父が当時経験したことを思うと、吸い続けするしかなかったのかもしれないと思うようにもなった。
だから、寿命を縮めたかもしれないその煙草を恨む気持ちというのは、自分が歳を重ねるうちになくなった。

6人いる僕ら5世代目のなかで、祖父が腕に抱いた孫は僕の3つ上の姉だけである。
生前の祖父については、祖母はじめ家族から教えてもらうのと、昔から通ってくださっている常連の方からときどき聞くことがある
あまり出回ってない雑誌を仕入れのついでに頼んで買ってきてもらったことがあったなぁ。君はそのお孫さんかぁ」
「僕はねVANさんでよくコーヒーご馳走してもらったよ」
祖父はうちの裏手にかつてあった喫茶店 VANさんへ日に何度も通い、コーヒーを飲み煙草を吸っていたという。
そんなに珈琲が好きだったら、もうあと30年待ってくれていたら良かったのに。

直接その姿を見ていないということもあるだろうけれど、頭に浮かべる祖父がいつだって優しいのは祖母による。
祖父のどんぶり勘定に困った話などをしても、祖母は必ず「でも、人は優しかったからねぇ」と付け加える。
その表情も声色も、いつも本当のことを言っている。

祖父の遺したピース缶が2つある。
ひとつは僕の暮らす部屋の寝室に、もうひとつは3階の喫茶に置いている。
そして、これも生前祖父が使っていたというMINTONのカップは、30年の時を経て喫茶で使われている。
いつかそのカップに淹れた珈琲を祖父に飲んでほしいとは思うけれど、いかんせん僕の淹れる珈琲は時間がかかる。
祖父は淹れている間にしびれを切らして裏のVANさんにいってしまうのではないか。
「和夫さんは本当にせっかちだからねぇ」と、横で祖母が言う。
2021年1月13日
山陽堂書店メールマガジン【2021年1月14日配信】
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sanyodo1891@gmail.com(担当 マンノウ)までご連絡ください。

山陽堂書店メールマガジン【2021年1月14日配信】


みなさま


こんにちは。
やはり寒いのは、なかなかつらいですね。
目が覚めてもベッドからしばらく出られず、「このまま起床を自粛して、」なんて考えが頭をよぎってしまいます。
(そんなことまでは要請されていませんが)
ただ、苦手な冬のなかでも「緊張感のある朝の空気」は好きで、
玄関をでて外の空気に触れると、すっと気が締まります。
漕ぎ出しは寒さに身を震わせるのですが、冬のなかでもうひとつ好んでいる「澄んだ空」に引っ張られながら、
今日も自転車で青山まで通っています。

さて、今日紹介する本は火曜日に読み、きのう水曜日ずっと主人公のことを考えてしまったこちら。
「ジニのパズル」崔実(チェシル)・講談社文庫
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https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000320275
抱いた疑問から見つけ出した「間違い」を正そうと、
矛盾に満ちた世界に対して声をあげ、革命を起こそうとする少女 ジニの物語です。

アメリカ・オレゴン州の高校に留学しているジニは学校に残るか退学するかを校長に問われ、3日の猶予を与えられて帰されます。
ホームステイ先のステファニー(絵本作家)は「ここ(オレゴン)に来る前に何かあったのかしら」と彼女に尋ね、ジニは「私がしたことは、本当に間違っていたんだ」と返します。

自分の傷を言い訳に、よりによって最も大切な人たちを、傷付け、騙し、欺き、追いやり、
日の当たらぬ底へ-自ら這いつくばって抜け出すしかない奥底まで突き落とした人間。
それが私だ。
これは、そんな私の物語なのだ。(本文より)

話は5年前に遡ります。
在日朝鮮人3世のパク・ジニは日本の私立小学校を卒業後、十条にある東京で一番大きな朝鮮学校に通い始めます。
ジニは朝鮮学校に通う日々のなかで抱いた疑問に考えを巡らせ、教室に飾られている肖像画に目を留めます。
そんな折、テポドンの発射が報じられ、ジニは日本人から思わぬ仕打ちを受けてしまい...
先述の通り、ジニはその後試みた革命で「最も大切な人たちを、傷付け」ることになってしまい、彼女自身も「落ちてくる空」に潰されてしまいます。
「見ぬふりをして生きること」ができれば、見つけた「間違い」を見過ごしていれば、潰れぬままでいられたかもしれません。
でもそれでは、ジニにとって生きていないことと同じだったのだと思います。
革命を期したジニの「宣言」や、それを果たせなかったあと「天国のハラボジへ」宛てた言葉が強く心に残ります。

物語の最終盤、ステファニーとのやり取りのなかで「落ちてくる空」に対しどうするかとジニは問われます。
"あのとき"からジニが過ごしてきた5年間を思うと読んでいて苦しくなるところがありましたが、ジニの口にしたひと言と、続く最後の1ページに救いを感じました。

この物語はご自身も在日3世である著者 崔実さんの朝鮮学校やアメリカ留学での経験がもとになっているそうです。
著者は物語のなかでジニにこう語らせています。

(前略)この物語から何かを学べるかもしれないなんて思ったら、とんだ大間違いだ。
初めに言っておく、ここから学べるものなんか、何一つありはしない。

学ぶよりも深く強く、ジニという存在と生き様が自分のなかに刻まれたと、著者に返したいと思います。

〈郵送販売について〉
ご注文方法等詳しくはこちらよりご確認ください。
https://sanyodo-shoten.co.jp/news/2020/05/post-188.html

今日の追伸は「シアトルの女の子」です。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた来週のメールマガジンで。

追伸

3年か4年前、まだ月に5日程度しか喫茶営業をしていなかった頃のこと。
やっているかやっていないか、やっている本人も半分わかっていないような営業形態だったため、いまのように続けて通ってくださるご常連さんも少なく、暇をしている時間が長かった。
ただ、その頃は今よりも「迷いこんでしまった」ように3階に上がってこられる方が多かったりもして。
ある冬の日、昼過ぎから喫茶営業をしていたその日もそうだった。
ひとりで1時間ほどを過ごしたあと、女の子がひとり螺旋階段を上がってきた。
初めていらっしゃる方は声をかけると「ハッ」とした表情を浮かべ、そのまま踵を返す方も多い。
緊張させてしまわないように「こんにちは」と挨拶すると、彼女は「コンニチハ」と返し、階段を上りきった。
旅行者かなと思って尋ねると、シアトルに住んでいる韓国系アメリカ人とのこと。
拙い英語で、ここは喫茶店で、ここは家族でやっている本屋で、たぶんいま1階のレジに居たのは僕と同じ顔をした母で、などと、ほとんどどうでもいい話をこちらがしたあと、
彼女からお昼ごはんにおすすめの場所はないかと尋ねられた。
今日までの滞在で食べたものを聞き、「それじゃあ、とんかつはどうかな?」と神宮前4丁目にあるお店を薦めた。
漢字とローマ字でお店の名前を書いてから窓側のカウンターに行き、簡単な地図を描いて青山通りを見下ろしながら説明した。
(ちなみに、ここまでのやり取りをしていても、まだ他にお客さまはいらっしゃらなかった)
明日の朝から京都などをまわり、日曜日にまた東京に戻り、翌日か翌々日に帰国するのという彼女に、「それはいいね、楽しんで」という一番つまらない言葉で返してしまった自分を恥じる。
「紙とペンを貸してください」と言った彼女は、名前とメールアドレスが書かれた紙を差し出した。
僕は代わりに名刺を渡し、「いまなら並ばずに食べられると思うよ」と送り出した。
彼女が3階から去ったあと、渡された紙を眺めていて、ふと思い、早足で螺旋階段を降りていくと、2階の登り口から3階の螺旋階段に向かおうとするところに出くわした。
僕は一度渡した名刺の裏にひとつ書き足し、彼女も紙にひとつ書き足した。

案内したお店やそれまでのやり取り、彼女が小柄でかわいらしかったことなどは覚えているのに、彼女の顔とあのとき何を書き足したのか、それだけはどうしてだか今も思い出せない。
2021年1月 7日
山陽堂書店メールマガジン【2021年1月7日配信】
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山陽堂書店メールマガジン【2021年1月7日配信】

みなさま

あけましておめでとうございます。
年が暮れていくなぁと思ったら、もう年が明けていました。
正月ぼけが抜けきっていないような、そんな心持ちです。
さて、今年初めに紹介するのは、ぼけっとしたままでも、
シャキッと切り替えても、どっちにしろ笑ってしまうこちらの絵本。
「たぷの里」藤岡拓太郎 さく・え(ナナロク社)
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https://nanarokusha.shop/items/5e37d6c894cf7b13e5066e1d
若手ギャグ漫画家(という肩書きであっている?)であり、
1ページ漫画作品集「夏がとまらない」(ナナロク社)でも知られる藤岡拓太郎さん初の絵本です。
力士(と思われる)たぷの里。
とぼとぼとぼと歩いている男の子の頭や、ぴょーんぴょーんぴょーんと跳ねている女の子の頭に、
その大きなお腹を「たぷ」と乗せます。(「たぷっ」ではない)
ページを捲るごとにシュチュエーションが変わり、その後も「たぷ」が続きます。
それがなんともおかしい。
たぶん子どもたちは、大きなお腹が乗っている(乗せられている)という事象に笑ってしまうことが多いのではないかなと思うのですが、
30過ぎたおじさんの僕としては、たぷの里とお腹を乗せられた各人の表情が気になって、「それどんな感情なのよ?」笑ってしまいます。
この絵本の対象年齢は「赤ちゃんから君まで」となっているのですが、たしかに老若男女みんなを笑わせてしまう破壊力を感じます。
人が笑うというのはこの世で一番豊かなことのひとつだと思うので
笑ってしまう絵本をつくってくれた藤岡拓太郎さんに感謝です。

〈GALLERY SANYODO展示〉
「山陽堂書店 年賀状展  2021.vol.0」
会期:2021年1月8日(金)〜1月30日(土)
平日11−19時 土曜11−17時 日曜休 ※1月8日(金)は17時まで
イラストレーター・デザイナーのみなさんから山陽堂書店に届いた50点以上の年賀状を展示します。
精悍な丑や初めて目にするタイプの丑、縁起物やおせち料理が並んだもの、本が描かれたものなどなど。
年初めにさまざまな年賀状をお楽しみいただければと思います。
ポスターにも使用しているメインビジュアルは岡本健デザイン事務所に所属する紺野達也さんに制作していただきました。
開廊時間は変更の可能性もありますので、ご来場前にご確認下さい。
展示情報はこちら。
https://sanyodo-shoten.co.jp/gallery/schedule.html

山陽堂書店から徒歩5分のOPA galleryでも新春企画「招き猫 展」が開催されます。
当店の年賀状が展示されているイラストレーターの方々も多く参加されています。
年賀状展と合わせてお楽しみください。
展示会期:1月8日(金)〜13日(水)
詳しくは下記URLをご覧ください。
http://www.opagallery.sakura.ne.jp/galllery.html



〈山陽堂珈琲 今週・来週の営業日〉
1月8日(金)13〜17時
1月9日(土)11〜17時
1月13日(水)13〜19時
1月14日(木)13〜19時
1月15日(金)お休み
1月16日(土)11〜17時
SNSでも営業日をお知らせしています。
twitter:@sanyodocoffee
instagram:sanyodocoffee
ご入店は閉店の30分前までにお願い致します。
状況により営業日時が変更となることもございますが予めご了承ください。
※変更の場合はHP・SNS等でお知らせ致します。

今日の追伸は「わんぱく相撲の彼はいま。」です。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた来週のメールマガジンで。

追伸

小学生の時に所属していたサッカーチームに、わんぱく相撲の全国大会に出場したチームメイトがいた。
その子は芸能活動もしていて、NHK教育で放送されていた「さわやか3組」にも出演していた。
グランドではディフェンダー、土俵では渋谷区の横綱、3組では学級委員長(役)、
そういえばラグビーもしていて、活躍の場の多い忙しい小学生だった。
相撲部屋からスカウトを受けていたけれど、中学ではラグビーを続けるとのことで、角界入りすることはなかった。
チームを卒業してからは、医師である彼のお父さんにはお世話になることはあったものの、
彼とは会うことのないまま長い時間が過ぎた。

最後に顔を合わせてから10年余りが経った頃。
サッカーのクラブワールドカップを放送する日本テレビの番組に、元日本代表の選手たちと共に画面に映る彼の姿があった。
周囲からそのような話は聞いていたものの、アナウンサー「安村直樹」としてテレビにでている彼を目にするのはそれが初めてだった。
「わんぱく相撲からアナウンサーかぁ」
ラグビーでも活躍したそうだけれど、知人から聞いた話によると大学ラグビー部内では「おもしろくて有名」だったいう。
画面越しの一方的な再会で妙な感覚ではあったけれど、自分に合った土俵で活躍している姿を嬉しく思った。

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