#
ブログ
TOP >ブログ
2011年9月18日
9月17日第6回トークイベント谷内六郎『北風とぬりえ』展 天野祐吉さんと中村至男さん

天野祐吉さんと谷内六郎さんの出会いは、

今から50年以上前にさかのぼる。

天野さんは出版社に勤めていた20代半ば、谷内さんは30代後半。

ダメもとで六郎さんに原稿のお願いに行かされたのがきっかけとなった。

 

当時は電話で依頼するなんて失礼で、

菓子折りをもって直接訪ねていったという。

 

さて、世田谷のご自宅にたどり着いたものの、

谷内さん宅の呼び鈴を、緊張してなかなか押すことができなかった天野さん。

こまったとおもいながら、家の前を行ったりきたりしていた。

すると、窓がスーッとあいて向こうから見ている人がいた。

びっくりして見てみたら、それが、谷内さんだった。

窓に向かって

「天野と申します!本のことでお願いにあがりました」

「どうぞ」

まもなく玄関のドアが開きたたみの部屋に向かい合ってすわったおふたり、

けれども互いにじーっとして顔もみない。

天野さんも緊張して下を向いたまま

「えー、じつは・・・」

すごい硬い調子でどもりどもりおねがいした。

そしたら、突然

クスクスクス・・・・

と笑い声が頭の上でしたので、びっくりして顔を上げると谷内さんが笑っていた。

はっ!とわかった。

あまりにも大真面目になってしゃべってるから、滑稽でおかしかったんだ。

それがわかってお互い笑ちゃって、いろいろお話して原稿も書いてもらうことになった。

そのときの話の中で

「ぼくのいちばん居心地のいいところは押入れの中です。

あまり人としゃべるのは好きじゃありません。」

と言われたので、天野さんは

「ぼくにちょっとにているな」

と思った。

 

そんな天野さんの話に対談のお相手の中村さんは

「天野さんにそんなかわいい一面があったなんて!」

と返していましたが、その場にいらした皆様も同じ思いだったのではないでしょうか。

天野さんでも、そんなときがあったのか・・・、

と思うとちょっと安心したりして。

 

天野祐吉さんと谷内六郎さんとの出会いのエピソードは

聞いていてその場面が目に浮かんでくるようでした。

それ以来、おふたりは谷内さんが亡くなるまでずっと親しくしていらっしゃり、

お亡くなりになった後もこのようなかたちでつながっています。

 

中村至男さんは広告批評の表紙なども手がけたアートディレクター。

佐藤雅彦さんとのしごとで「勝手に広告」(マガジンハウス発売)の本などを出されています。

来年5月には、福音館から絵本も出版されます。

 

中村さんも谷内六郎さんの『北風とぬりえ』をよんで、

「厳しい生活のなか病苦と闘っているものすごい現実と、

頭の中でいくらでも宇宙をつくれる想像力が織り交ざった文章がすごいとんでる」

「絵と文章が相乗効果となって、互いに制限しないで表現し合っている」

といっていました。

 

天野さんの文章の先生は谷内さん。

谷内さんの書き文字には『音』がする、音が聴こえてくる感じ。

と天野さん。

 

今、ギャラリー山陽堂では直筆の写しがご覧になれます。

どうぞみなさま、六郎さんの『書き文字』の音を聴きにきてください。

そのときそのときの六郎さんのこころの様子が、

しずかにつたわってくるかもしれません。

 

次回第7回のトークイベントは、

谷内六郎さんのご長女広美さんをお迎えします。

娘さんから直接六郎さんの話をお聞きできることって、

そうそうないと思います。

席も若干残っております。

六郎ファンの皆様、この機会をおみのがしなく!

 

トークイベントの後は、四国名産一六タルトでお茶会もありますよ!

http://www.itm-gr.co.jp/contents/tarto-toha.html

 

*トークイベントの様子はこちらからもどうぞhttp://amanoisako.exblog.jp/

 

 

 

 

 

 

 

 

2011年9月11日
六郎さんの壁画をめぐる、10数年ぶりの再会。

レジに一冊の文庫と谷内六郎さんの絵はがきを数枚差し出した男性。

私が12日から六郎さんの展示がはじまりますからと

お誘いをのひと言をとおもったら、

その男性は

「以前、壁画を撮らせてもらいました。

娘さんと一緒に壁画のまえの看板をどけてそうじしてくれて。」

・・・・・・・・・・・・・・、はい、そういえばだいぶ前に

「壁画の写真を撮らせてもらっていいですか?」

と大学生くらいの男の子が訪ねてきたのを思い出しました。

秋だったか冬だったか、

なにしろその当時、壁画の前は、よその看板のオンパレードでした。

六郎さんの壁画の5分の1は、哀しいことに看板で隠されている状態でした。

 

きっと、せっかく写すのだったら看板をどけた方がよいと思って、

当時小学生だった娘と二人でどけたのでしょう。

そして、そうじをしてもらったとおっしゃるのは、

看板をどかした後に落ち葉やゴミが落ちていたからではないかと思うのです。

 

大学生くらいの男の子が来たことは覚えていましたが、

娘と二人で看板をどけてそうじをしたことなど

すっかり忘れていました。

 

でも、その男性は(もうあれから10数年ですから男の子返上)

ちゃんと覚えてくれていたのです。

このタイミングでまた来てくれたことも、

あのときのことを覚えてくれていたことも、

なんだかとってもうれしかったです。

 

そんなうれしさの中、いよいよ明日から

「谷内六郎『北風とぬりえ』展」がはじまります。

 

六郎さんのモノクロの世界に身を置いてみてください。

六郎さんの直筆の雰囲気にふれてみてください。

六郎さんの「感受性ゆたかな息づかい」を感じてください。

 

六郎さんとこの本を出版された天野祐吉さんの出会いは、

今から60年まえくらいにさかのぼります。

 

「北風とぬりえ」には天野さんのひとかたならぬ思いがこもっています。

「いまのぼくらがわすれてしまっている大事なことが、いくつも書かれていることに

びっくりなさるはずです。」

と天野さんは言います。

 

谷内六郎さんのこと、ひとりでも多くの人に

もっともっと知ってもらいたいとおもいます。

みなさまお誘いあわせの上、

ぜひお越しください、お待ちしています。

9/12-10/1 この間、日曜日も13時から18時まで営業します!

 

最近の記事
アーカイブ
カレンダー
2016年10月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31