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2018年8月 1日 更新
戦中・戦後の暮しの記録 君と、これから生まれてくる君へ

君という美しい命は、偶然灯された一閃の光だ

 

君、忘れてはいけない。

きのう、戦争があったのだ。昔むかしの物語ではない。

その大きな戦は、昭和という時代、二十世紀にあった。

君がきょう歩いているかもしれない美しい町は、

かつて亡きがらが転がり、いたるところが墓地となった焼け野原。

空から日夜恐怖が降ってくる、地獄のような土地だった。

そんなところで、それでも人は・・・君の父や母の父や母、祖父や祖母は、

生き続けた。生き続けたから、君がいる。

君という美しい命は、未曾有の戦災をかろうじてくぐり抜けた人、

その人を守った誰かの先に偶然のように灯された一閃の光だ。

我々は『戦争中の暮らしの記録』から半世紀経ったいま、もう一度訊く。

あの日々、どう暮らしたか?どう生きて、どう死んだのか?

これが最後のチャンスかもしれない。急げ急げ!

この新たな本では約百編の応募作文を掲載する。

名もなき庶民の、胸を激しくゆさぶる言葉に、触れてほしい。

それは、我らの肉親からの現在形の叫び、愛だけからなるメッセージだ。

いま、この一冊を手にしようとする君がもし若いとしたら、

平成に、あるいは二十一世紀に生まれた人かもしれない。

だが、君が誰であろうと、忘れてはいけない。

ドアの向こうに、次の戦争が目を光らせて待っているということを。

人類の短い歴史とは、戦争の歴史であるから。戦後とは、戦前のことだから。

先の本のメッセージを、繰り返す。『これが戦争なのだ』。

それを知っておきたい。君に知ってもらいたい。

できることなら、君の後に生まれる者のために、そのまた後の者のために、

この新たな一冊を、たとえどんなにぼろぼろになっても、残しておいてほしい。

 

『暮しの手帖』編集長    澤田康彦


暮しの手帖社 2,500円+税