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2012年10月30日 更新
『さよならのあとで』詩ヘンリー・スコット絵高橋和枝 夏葉社1365円
あとがきにかえて より

前略

ひとはだれでも死別を経験します。
親しい人、ときには、自分の命を失っても守りたいような人とさえ、別れます。
それは、人生を生きていくうえで、一番つらい出来事です。
だれかの言葉や、匂いや、音や、光や、空気や、風や、すべてのことが、
その人の不在を静かに告げます。
私はもう二度と立ち直れないのではないか。
何度も、何度も、そう思います。
けれど、私たちは思い出すことができます。
その人のいた場所や、いつも座っていた椅子、読んでいた本、ずっと履いていた靴、微笑み、くしゃみ、声、指の先。

その人がどれだけ私のことを愛してくれていたのか。

そのことに思いをはせたとき、私たちは、再び、ゆっくりと立ち上がることができるのだと思います。

この詩の作者である、ヘンリー・スコット・ホランドは、英国教会の神学者であり、経済や貧困、戦争などの社会問題について思索した哲学者でもありました。
彼の著作は現在、日本語では刊行されておらず、その全容を知るのはなかなか難しいのですが、この
"death is nothing at all"に限っていえば、それは彼の思想や信仰を超えて、多くの人に共有されているといえます。

中略

この詩の翻訳にあたっては、ある方から多大なご協力をいただきました。
本書に掲載している詩の大部分は、その方が、祈るような気持ちで訳されたものです。
また、若林一美先生のグリーフケアに関する一連のお仕事は、悲嘆する私を励まし、私をこの詩に巡り合わせてくれました。
お二人にはこの場を借りて、厚く御礼申し上げます。

本当にありがとうございます。

そして、早世した愛する従兄にも。
ありがとう。

この詩が悲しんでいる人の心を支えてくれるならば、こんなに嬉しいことはありません。

発行人