どういう人がこの雑誌を考え出して、何を譲らぬようにしながらこれをつくっているんだろう、と想像したくなるものは数えるほどしかありません。私にとってそのような雑誌の筆頭にあがるのが、マガジンハウスの「クウネル」でした。
「ク ウネル」流としか言いようのない写真選び、写真の添え物ではありえないしっかりとしたテキスト、そしてそもそもそのような写真とテキストをみちびきだす記 事の、「クウネル」でしか設定しえないテーマ──どれをとってもちょっとやそっとでは真似のできない背筋のとおった編集が、しかもその背筋を見せないよう に行われている。「クウネル」のような編集をしている雑誌は、どこを見渡しても「クウネル」しかない。それは世界を見渡しても、ない。それぐらいオリジナ ルな雑誌でした。
このように同じ編集者として敬意を持って岡戸さんを語る松家さん。そんなお二人の対談を実現できることは、山陽堂にとっても大変うれしいことです。
松家さんのデビュー作『火山のふもとで』の話や岡戸さんの雑誌『talking about』の話もお聞かせいただけることと思います
松家仁之
1958年、東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。1982年新潮社入社。1998年、海外
文学シリーズ「新潮クレスト・ブックス」創刊。2002年「考える人」創刊、編集長
に。2006年より「芸術新潮」編集長を兼務し、2010年退職。2012年、デビュー長篇
『火山のふもとで』を発表。
岡戸絹枝
1955年生まれ。編集者。1981年マガジンハウス入社。「週刊平凡」「Hanako」
「olive」の編集に携わり、1998年「olive」の編集長、2003年「ku:nel」の創刊編集
長を経て、2010年退職。現在は雑誌「talking about」を編集する。