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2011年11月15日 更新
大野更紗著『困ってるひと』ポプラ社1470円

10月26日秋葉原で、'第2回首都圏書店大商談会が開催された。

たまたま通りかかったポプラ社のブースでポプラ社の大田さんに声をかけていただいた。

ちょうど『困ってるひと』の著者大野更紗さんがサイン会をしているところだった。

新聞の書評を読んですごいなあと思っていたし、糸井さんもツイッターで絶賛していた。

お客様からも注文を受けて気になっていた著者だった。

 

著者は1984年福島県生まれ、標高約700m、山間のムーミン谷のような小さな集落で育つ。

今もなおそこにはまるっと肥えた2匹のムーミンパパとママが生息しているとのこと。

 

上智大学のフランス語学科を卒業、在学中ビルマ難民に出会い、

民主化運動や人権問題に関心を抱き研究、NGOでの活動に没頭。

大学院に進学した2008年、自己免疫疾患系の難病を発病する。

1年間の検査期間を経て、現在も都内某所で生存中。

BLOG:http://wsary.blogspot.com/

Twitterアカウント:@wsary

(困ってるひと 著者プロフィールより)

 

 

更紗さんは、色白だった。

薬の副作用か、まあるいお顔に大きなマスクにめがね。

白いやわらかそうな指さきは、真赤なネイルとラインストーンで華やいでいた。

 

順番がきて、更紗さんを前に戸惑う私がいた。

これが正直な気持ち。

難病でたいへんですね、気の毒ですね。

そんな風に どこかで憐れんでいる自分を見透かされていると思ったからかもしれない。

 

更紗さんは色紙に

今日、絶賛生存中のすべての人へ・・・

 "生きて笑おう!"

と書いてくれた。

 

今日、『困ってるひと』読み終えた。

検査検査検査・・・、それも麻酔なしで筋肉を切り取る手術とか・・・。

それはもう、想像しただけでも拒否反応をおこすようなものばかり。

ただでさえ日々痛みに耐えているのに。

けれども彼女に痛みが襲うのは、身体的なものばかりではなかった。

 難病患者となったあと、友人をとことん疲弊させている自分に気づかされる。

ある日、それに追い討ちをかけるようなことが起こる。

彼女には、家族とも友人とも精神的に断絶した「絶対的孤独」のなかでも別格だった

命綱兼伴走者である主治医がいた。

しかし、彼女は聞いてはならなかった主治医の言葉を偶然耳にしてしまう。

皮肉にも主治医のその言葉が、崖の淵すれすれで立っていた彼女を奈落の底にを突き落としてしまうのだ。

 

その「底」には言葉も、感情もなかった。

誰もいなかった。

これが本当の絶望なんだと思った。

これが人の死だと思った。

そこには、苦しみ以外に何もなかった。

生きる動機はなかった。

 

でも、その日彼女の隣には「その人」がいてくれた。

ただ、背中をさすって、隣にいてくれた。

「生きたい、かも」

明日がきてもいいかもしれない、と思った。

おしりに洞窟があっても、全身が痛んでも、ずっと苦しくても。

明日また、あの人に会えるなら。

そんな自分をこういっている

人間とは、困ったものである。

一瞬にして、生存本能が息吹き返した。

生きる動機ができてしまった。

「オールユーニードイズ、ラブ」

ジョンレノンの歌を、ふとんの中でこっそり口ずさんでしまった更紗さんなのであった。

 

サインをしてもらってしばらく経った土曜の朝

NHKのおはよう日本に更紗さんの姿があらわれた。

リポートしている女性の声にも聞き覚えがある。

「しんばさんだ!」

実は、昨年の3月、山陽堂もNHKのおはよう日本の取材を受け

12、3分放映してもらった。

そのときのディレクターがしんばさん。

いいお仕事しているなあ。

 

明日、オズマガジンさんの取材がある。

元気が出る、希望がある本を3冊推薦する。

その内の一冊に、『困ってるひと』を選んだ。

どうして?

よんでみたらわかりますよ。