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2020年12月24日
山陽堂書店メールマガジン【2020年12月24日配信】
山陽堂書店ではメールマガジン配信しています。
配信をご希望される方は件名に「配信希望」と明記のうえ、
sanyodo1891@gmail.com(担当 マンノウ)までご連絡ください。

山陽堂書店メールマガジン【2020年12月24日配信】


みなさま

こんにちは。
お店からだす年賀状はすでに用意できているのですが、
友人らへ送る個人用の年賀状デザインがまだ決まっていません。
デザインと呼べるほどのシロモノを毎年つくっているわけではないのですが、
「今年もこんな調子で生きてまいります」というメッセージを少しだけ込めています。
どうしましょう、もう年末も年末なのに。

さて、今回のメールマガジンでご紹介するのはこちら。
「日本文学全集 08 」池澤夏樹=個人編集・河出書房新社のなかに収められている宇治拾遺物語」町田康訳です。

2020.12.24.1.JPG


http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309728780/
今年87日配信のメールマガジンに登場してくださった噺家の三遊亭好二郎さんもその時に紹介してくれたこちらの書籍。
町田康さんの訳が話題になっているのは耳にしていたものの、「日本文学全集」というその字面を見ただけで萎縮してしまい(本屋の息子なのに)、
店頭で実物を目にして「これはほとんど辞書だなぁ」と目視による測定でも重量の許容を超えていました。
つまりは、どうしてもなかなかに手をのばせなかったのです。
が。
山陽堂ブック倶楽部(読書会)を一緒に運営してくれているコラムニスト 上原隆さんより、
「来年1月の読書会、町田さんの訳した宇治拾遺物語で初笑いというのはどうだろう」という提案をいただいたことから手にして読んでみると、これがもう。
笑わずして読み進められません。
(「っふぁ」という音がしたので何だ?と思ったら自分の笑い声だった、なんてことが本当におきる。)

「奇怪な鬼に瘤を除去される」という話。(いわゆる「瘤とり爺さん」?)
一世一代の踊りを終えたお爺さんは鬼たちから拍手喝采を浴び、リーダーの鬼から「また絶対に来てくれ」と言われます。
踊りの興奮冷めやらぬお爺さんが息を弾ませつつ返した言葉。
町田康さんの訳によるとこうなります。

「はい。絶対、また呼んでください。みんなが喜んでくれたのはすごく嬉しいんですけど、
自分的にはまだ納得できていない演技がいくつかあって、今回、急だったんでアレですけど、
気に入ってもらって、また、呼んでもらえるんだったら、次こそ完璧な演技をしたいんで」

笑ってしまう。
さっきまで陰に隠れて縮み上がっていたお爺さんが、衝動に駆られるままパーンっと弾けて鬼の前に出て踊りまくり、
振り切ったテンションのまま鬼たちと喋っちゃっている姿が目に浮かびます。

踊りだすまでの、お爺さんのテンションが振り切れるまでの描写も見事です。
訳を読むと「お爺さんそんなこと言ってないでしょ!」と、一見思えたりもします。
たしかに"そんなふう"には言っていないかもしれません。
ただ、お爺さんの伝えた言葉の勘所は外していないように思えますし、頭に浮かぶ画はどこかしっくりくるところがあります。
町田康さんの訳を、ただおもしろいだけではなく、すごいと感じたのはそんなところです。
ある翻訳家の方が先日当店にお立ち寄りくださったときにこの本の話になり、
「(翻訳家や作家界隈では)ここまで自由に訳していいのか!と評判なんですよ」と叔母(おば2)に話してくれたそうです。

収められている話はいわゆる"下ネタ"も多く、「陰」という漢字もやたらと出てきます。
こんなにお下劣な話が古くから語り継がれているのは何故だろうとも思いましたが、理由は単純「おもしろいから」ですね。
鎌倉時代の貴族も武士も坊さんも、僕らと同じようなことで笑っていたのだと思うと、親愛の情が湧いてきます。

2021
1月の山陽堂ブック倶楽部では、「日本文学全集 08 」に収められた町田康さん訳による「宇治拾遺物語」P.203386 のみを課題本とします。
開催日程や申込み方法は下記よりご確認ください。
とにかくもう笑ってしまいますので、あとはみなさん、いつ読んで笑うか。
時節合いましたら山陽堂ブック倶楽部で笑いをご一緒しましょう。

三遊亭好二郎さんが登場してくださった87日配信のメールマガジンはこちら。
https://sanyodo-shoten.co.jp/blog/2020/08/87.html

◇第15回山陽堂ブック倶楽部(オンライン)
課題本:「日本文学全集 08 」池澤夏樹=個人編集・河出書房新社
※対象となるのは「宇治拾遺物語」町田康訳P.203386)のみです。
日程:2021128日(木)19時より2030分頃まで
参加人数:8
参加費:1,000
申し込方法:sanyodo1891@gmail.com(担当 マンノウ)宛てに「1月山陽堂ブック倶楽部参加希望」と明記の上ご連絡ください。
1229日〜14日の間はお休みのため、お申込みへの返信を致しかねます。ご了承ください。

◇第16回山陽堂ブック倶楽部(オンライン)
課題本:「永い言い訳」西川美和・文春文庫
日程:2月未予定

〈郵送販売について〉
ご注文方法等詳しくはこちらよりご確認ください。
https://sanyodo-shoten.co.jp/news/2020/05/post-188.html

 


〈山陽堂書店 年末年始営業日〉
2020
12
28日(月)1115
12
29日〜14日 休業
2021

1
5日(火)〜19日(土)1117
1
12日(火)より通常営業

〈山陽堂珈琲 年末年始営業日〉
※こちらは3階喫茶の営業日時です。
2020

12
24日(木)1319
12
25日(金)1319
12
26日(土)1117
12
28日(月)1115時(年内最終営業日)
2021

1
8日(金)1317
1
9日(土)1117

SNS
でも営業日をお知らせしています。
twitter
@sanyodocoffee
instagram
sanyodocoffee
ご入店は閉店の30分前までにお願い致します。
状況により営業日時が変更となることもございますが予めご了承ください。
※変更の場合は当店HPにてお知らせ致します。
山陽堂書店HPhttp://sanyodo-shoten.co.jp/

今日の追伸は「楽しいことと、勝つことも負けることも。」です。
(※「七五三(後編)」は年内にどうにかお届けできるように致します。すいません!)

いまさっきジャージー牛乳とフィンランドパンの合計金額が1111円だったのですが、
今日どこかでお会計(偶然生じた合計金額)が1224円だった方がいらしたら、なんとなくご連絡ください。
「おぉ!」くらいしかお返しできないのですが。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。


山陽堂書店
萬納 嶺


追伸

12
20日の日曜日。
駒沢オリンピック公園の第一球技場で小学1年生のミニサッカー大会があり、
この日は担当しているコーチのアシスタントとして参加させてもらった。
選手たちとは夏に浜辺がある公園で会って以来。
「遊んでいるときはあんな感じだったから、サッカーのときはこんな感じかな?」
サッカーをするところを見るのは初めてという子も何人かいて、
公園での様子を思い出しながら勝手にその選手のプレーの特徴を想像したりする。

事前に確認した大会要項の一つには「勝つことではなく、楽しみがすべて」とある。
その通りだと、僕も思う。
6
歳、7歳の選手の心身に「楽しむこと」に先んじて「勝つこと」を伝えていくことには違和感を覚える。
1
年生の試合であっても勝敗があっていいとは思うし、それはスポーツ競技から学べる大切な要素だと思う。
ただそれは、楽しんだ結果として生じたものでなければならない、というのが僕の考え。
特にこの年代の選手たちにとっては。

予選リーグが始まる。
担当コーチがゴールを守るキーパーだけ指名して、みんなをフィールドに送り出す。
攻撃が好きな選手、まずは守ることを考える選手、とにかくボールがあるところに向かう選手。
ポジションを決めずとも、なんとなくチームとして成立している様子がおもしろい。
12
分という短い時間の中で、コーチはみんなが同じ時間だけプレーできるように選手交代をし、声をかける。
交代を指示された選手を送り出すときに僕も声をかける。
「たっちゃん!寒いからコート貸して!」
「いいよっ!」
フィールドの中に駆けていく背中に感謝しつつ彼が脱いでいったコートを膝にかけて暖をとり戦況を見守る。

予選リーグでは2試合目を落としてしまったものの、僕らに勝利したチームが他チームに負けてしまったこともあって、
1
位トーナメントが転がり込んできた。
それが伝わると「まだ優勝できるの!?」と選手たちは喜んだ。
「勝ちたい(優勝したい)」という気持ちが選手たちに湧いている。
良いなと思う。
彼らは試合に勝つこと、前に進んでいくこと、上に上がっていくことを楽しんでいる。
課せられた勝利ではなく、刷り込まれた勝利への欲求ではなく、
彼ら自身から生まれた(内から発せられた)「勝利する喜び」に満ち溢れている。

気合いの入った彼らは準決勝で勝利し、決勝に進出。
決勝戦の相手は事前に見る限り、少し大きな子や足の早い子もいて手強そうにみえた。
始まった決勝は僕の予想とは異なり、終始こちらが押し込む展開に。
しかし、何度かあったビッグチャンス(コーチ3人揃ってベンチから腰を浮かせる)も得点までは至らず、PK戦へ。
コーチがペナルティーキックを蹴りたい人を募ると、ほとんどの選手が「はい!はい!」と手を挙げ、
その様子をみて「すんげぇサッカー楽しんでんじゃん!」と、嬉しくて心のなかで叫んでしまった。
外してしまったらどうしようなんてことは微塵も考えてない。
「ゴール決めたい!」「シュートしたい!」「ボール蹴りたい!」「もっとサッカーしたい!」ただそれだけ。
昨年まで僕がみていたときにはこういった場面であまり積極的にでてこなかったレフティ(左利き)のあの子も手を挙げていて、それも嬉しい。

PK
戦では勝つことができなかった。
優勝に歓喜する相手を横目に、フィールドからベンチに戻ってる選手たち。
「負けちゃったー!」と明るい調子の選手もいれば、勝ちも負けも特に関係ないといった様子で淡々としている選手、
かと思えば悔しくて泣いている選手もいて、テンションがバラバラなのがまたおかしい。
勝つことも負けることも、彼らにとっては最高のできごとだった思う。
「みんな今日はサッカー楽しかっただろうなぁ」と、それが嬉しくて僕にとっても楽しい一日だった。

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