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2020年12月17日
山陽堂書店メールマガジン【2020年12月17日配信】
山陽堂書店ではメールマガジン配信しています。
配信をご希望される方は件名に「配信希望」と明記のうえ、
sanyodo1891@gmail.com(担当 マンノウ)までご連絡ください。

山陽堂書店メールマガジン【2020年12月17日配信】

みなさま

こんにちは。
今年は表参道のイルミネーションも欅には灯さず、
歩道脇の草木(歩道植栽帯というらしい)のみに点灯しています。
この時期に帰りが遅くなったときにはイルミネーションの間を自転車で抜けて帰ることが励みのひとつでもあったので、
少しばかり寂しく感じていたのですが、原宿駅寄りの南国酒家さんの前に「竹あかり」なるものが施されているのに気づき「おぉ、ありがてぇなぁ」と思いました。

さて、本日はこちらの本をご紹介します。
「緑の髪のパオリーノ」著 ジャンニ・ロダーリ / 訳 内田洋子・講談社文庫
2020.12.17.1.JPG
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000339350
著者のジャンニ・ロダーリさんは1920年生まれで今年が生誕100周年。
小学校の国語教師、ジャーナリストを経て作家(児童文学者)となった経歴の持ち主で、
1970年に国際アンデルセン賞を受賞していますので、今年は受賞50周年でもありますね。

この本には50あまりの短編が収められています。
一読目は、想像もしていなかったような、初めて来るどこかに迷いこんでしまったような心持ちに。
が、二度、三度と読んでみると「ん?あれれ?」といった調子で、
物語のおかしみだけでなく、そこに込められているものが垣間見えてくるような気がしてきます
著者の言葉を正確に捉えられているのかわかりませんが(正確に捉えることが良いのかもわかりませんが)、
短い話のひとつひとつにジャンニ・ロダーリさんから子どもたちへの、そして大人になった人たちへのメッセージが伝わってきます。
表題「緑の髪のパオリーノ」は原題である「パオリーノの木」として本の中に収められています。
緑色の髪で生まれてきたと思われていたパオリーノ。
その緑色は髪の毛ではなく、草でした。
悪さをして頭の草がトゲだらけの硬い草になったりもしましたが、
パオリーノが悪さをしないことを誓って歳を重ねるうちに、そこにはカシの木が生えるようになり...
パオリーノは亡くなってからも友だちだったみんなに言葉をかけられます。
この話を特に気に入って付箋をつけたのは、「自分もこういうふうでありたいなぁ」と考えているからだと思いました。
他にも「とても小さな家」「ドロボウたちのための玄関ブザー」「悪いヤツら」「クモから家主への手紙」
「しゃべるネコ」「月の思い出」「もっとも短いおはなし」「画家になります」「クリスマスツリーの陰で」などが僕のお気に入りです。

30歳を過ぎたいま読んでもおもしろかったですが、10歳の時に読んでも、20歳の時に読んでも、
そしてもっと歳を重ねてから読んでも楽しめるだろうことを思うと、「どんな相手にも贈ることのできる本」ともいえそうです。
それから。
装画を描かれた荒井良二さん、編集をされた飯田陽子さん、翻訳をされた内田洋子さんがそれぞれあとがきを書かれているのですが、
あとがきを3名が書かれた本というのは僕にとっては初めてでした。(世には他にもあるのかもしれませんが)
ロダーリさんへの御三方の敬愛を感じました。
初回限定版には特典として荒井良二さんのクリスマスカード(写真左)が付きます。
2020.12.17.2.JPG

〈郵送販売について〉
ご注文方法等詳しくはこちらよりご確認ください。
https://sanyodo-shoten.co.jp/news/2020/05/post-188.html


〈GALLERY SANYODO展示〉
現在開催中
◇「翻訳目録」刊行記念 タダジュン版画展 

期間:12月26日(土)まで
詳しくはこちらよりご確認ください。
https://sanyodo-shoten.co.jp/news/2020/11/121226.html


〈山陽堂珈琲 今週・来週の営業日〉
12月16日(水)13〜19時
12月17日(木)13〜19時
12月18日(金)13〜19時
12月19日(土)11〜17時
12月23日(水)13〜19時
12月24日(木)13〜19時
12月25日(金)13〜19時
12月26日(土)11〜17時
12月28日(月)11〜15時(年内最終営業日)

SNSでも営業日をお知らせしています。
twitter:@sanyodocoffee
instagram:sanyodocoffee
ご入店は閉店の30分前までにお願い致します。
状況により営業日時が変更となることもございますが予めご了承ください。
※変更の場合は当店HPにてお知らせ致します。
山陽堂書店HP:http://sanyodo-shoten.co.jp/

今日の追伸は「緑の髪と六本木通り」です。
「七五三(後編)」は次号以降改めてお届けします。
(どれほどの方がお待ちくださっているのかわかりませんが、申し訳ありません。)
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた来週のメールマガジンで。

山陽堂書店
萬納 嶺

追伸

いまこうして書くことも恥ずかしいのだけれど。
過去数回、諸般の事情により髪の毛を緑色にしたことがある。
(諸般の事情にしろ、数回やっているのだから自分の意志というものは確かにあった。恥ずかしい)
アルバイト先(当時は築地市場内だった)でお叱りを受けたり、髪の毛がひどく痛んだりと、緑色にして良かったことはほとんどない。
青山から築地市場まで自転車通勤だったので、緑から黄色く色づき、そして枯れて裸になる外苑の銀杏並木を早朝と昼間に横目で見るたび、
「自分の髪の毛も緑の色が抜けて金髪(黄色)になって、葉ひとつない冬の銀杏の木のようになるじゃないか...」と不安を感じたことを思い出す。
ただ、ひとつだけ良かったこととして心に残っている出来事がある。

築地市場でアルバイトを終えた帰り道。
普段は赤坂見附まで行って青山通りに出てから坂を上がるところ、
その日は手前の六本木通りで左折して帰ることにした。
曲がってからひとつ目かふたつ目だか、登り坂が始まるというあたりで信号にしたがって止まっていると、
通り沿いにある床屋さんから僕より30くらいお歳を召した女性店主さん(か従業員さんか)が出てきた。
女性は歩道をこちらに進み、言った。
「あなたの緑の髪きれいね」
周囲からの評判は概ねよくなかったので、いきなりそのように言ってもらえたことに驚いた。
「いや、すいません、恥ずかしくていつもは帽子かぶっちゃってます」と恐縮して返事をすると、
女性は「ううん、緑色似合ってるわよ、あなたに」と言った。

偶然店を出たところに居合わせたのか、
あるいはドアの外に緑色を見かけて出てきてくれたのかはわからないけれど、
いずれにせよ、店からの数歩は「緑がきれい」だと伝えるという意志の証であった。
もう緑色の髪にすることはないけれど、
いまこうして思い出しても、あのときの一言は嬉しかった。

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