その人はこういうことも言いました。
「この街は私にはなじめないなあ」と。
その人は文筆家であり、前衛的な雑誌に、
きわめてアバンギャルドな文章を書いていた人なのです。
私の目から見れば、このような仕事をしている人の印象が、
青山の街の印象と重なるのです。
私がこの街は別の世界のようだと思ったことと同じだとすれば、
時代の先端にいるような人でも、感覚の重心は人情の側にあるんだと思いました。
でもこれは意外でもなんでもなくて、むしろ当たり前のことなんだというように、
私の胸の中で溶けていきました。
これは組織の鎧と同じことで、どんなクリエイターであっても、
自由人であっても表面的なものの内側には同じ人間が住んでいるということです。
-大坊勝次著「大坊珈琲店のマニュアル」誠文堂新光社より―
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