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2016年8月29日 更新
長友啓典著「『翼の王国』のおみやげ」木楽舎1400円+税

山陽堂イラストレーターズ・スタジオの講師アートディレクター長友啓典氏の本です。

ANAグループ機内誌『翼の王国』の連載から全国のおいしいおみやげと、おみやげ話

の50選(山陽堂書店のギャラリーでは原画展も開催)。

 

 

-今は「公園通り」と呼ばれている渋谷区役所前の坂道を、当時存在した「ワシントンハイツ」(今のNHKあたり)に向かって上りきったところに専門学校「桑沢デザイン研究所」があるが、僕はそこの生徒であった。もちろん「スクランブル交差点」も『パルコ』もない時代のことで、普通の坂道である。それが通学路であった。


 50年以上も前のことだ。「デザイン」の「デ」の字も知らない、ハタチ前の自分を昨日のように思い出していた。学校のバルコニーの前が、途方もない広さの芝生が敷き詰められた住宅地(在日米軍施設)であったが、当時の住宅事情からすれば夢のような生活空間である。デザインという言葉がピッタリ当てはまる「ワシントンハイツ」を見ながら彼の国に思いを巡らせていた。-本文より

 

戦前、陸軍の練習場だった代々木練兵場(現在のNHK放送センター・国立代々木競技場・代々木公園一帯)は、戦後米軍家族(827戸)の住宅エリアとなりました。この本を読みながら、ワシントンハイツを通して、渋谷・原宿・青山周辺にいた若者は、アメリカ文化に自然と触れていたのだなと思いました。

この本は、ただおみやげを紹介する本だけではありません。著者の来し方に触れることのできる一冊でもあります。