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2013年2月19日 更新
『はやくはやくっていわないで』益田ミリ作平澤一平絵
きこえていますか?
この子の声、あの人の声、わたしの声・・・
「どうしていそぐ」 「いそいでどこいく」
「ひっぱらないで」 「おさないで」

この絵本には、いまを生きるわたしたちがつい忘れがちな、とても大切なメッセージがつまっています。となりにいるお子さん、大切に思うひと、そしてこの本を手にする皆さん自身の心の声でもあります。この声に耳をふさぐことなく、しっかり耳をかたむけてみてください。自分が自分のところに戻ってくる、そんな感じがするはずです。
読み聞かせや、声に出して読むことも、おすすめします。
●益田ミリ(ますだ・みり)
1969年大阪生まれ。イラストレーター。主な著書に『ほしいものはなんですか?』(ミシマ社)、漫画『すーちゃん』シリーズ、『週末、森で』『47都道府県女ひとりで行ってみよう』(以上、幻冬舎)、『ふつうな私のゆるゆる作家生活』(文藝春秋)、『お母さんという女』(光文社)、『言えないコトバ』(集英社)、『アンナの土星』(メディアファクトリー)などがある。
●平澤一平(ひらさわ・いっぺい)
1967年秋田生まれ。イラストレーター。中央美術学園卒業。東京ガスカレンダーコンペグランプリ受賞。第9回イラストレーション誌チョイス大賞にて大賞受賞。TIS第1回公募大賞受賞。本や広告の挿画・装画、カタログ、プロモーションビデオのイラストレーションなど幅広く活躍中。半立体の木彫りの作品が多い。本書は水彩画。
●著者より本書刊行によせて
わたしの心を温かくしてくれる思い出のひとつに、小学校一年生のときの教室でのできごとがあります。

その日、クラスのみんなでくじ引きを引くことになりました。なにをもらうためのクジだったのかは忘れてしまったけれど、楽しい雰囲気だったから、きっとレクレーションの時間だったのでしょう。

担任は若い男の先生でした。順番にクジを引きなさいと先生が言ったので、生徒たちはいっせいに前に走っていきました。

だけど、わたしはグスグズしていて出遅れてしまった。クラスメイトの中で一番ビリ。

こんな最後に並んだら、もういいものなんてもらえない・・・。

そう思うと悲しくて、せっかくの楽しかった気持ちもしぼんでしまったのです。

すると、思ってもみないことが起こりました。先生がわたしのところにやってきて、みんなの前でこう言ったのです。

「一番最後に並んでえらかったな」

わたしは先生に誉められてびっくりしました。びっくりしたけど、すごくうれしかった。うれしくて、うれしくて、もう35年も昔のことなのに、思い出すと今でも温かい気持ちになるのです。

先生は、最後の子供までちゃんと見ていて、待っていてくれた。はやくはやくって言わないで、待っていてくれたのです。

励まされたり、なぐさめられたり、人はたくさんの言葉を受け取って前に進んでいく。でも、一番うれしいのって、誰かが待っていてくれたことじゃないかなとわたしは思うのです。
ながく読みつがれる絵本になることを願って。

2010年10月
益田ミリ

ミシマ社ホームページより