「うん、ママだ・・・・ママだ・・・・」
2011年3月11日、東日本大震災。
津波が奪った母親の面影を、
ひとりの女性が生前の姿にもどしていく。
何時間もかけて、ていねいに、絶対にもとにもどすと思いながら。
その手で復元された生前の姿に、家族はようやく涙を流し、
子どもたちはお別れを告げることができるようになる。
人の最期の姿は、残された家族の今後を決める。
被災地にボランティアで入り、
遺族の思いが動き出す瞬間を見てきた復元納棺師の記録。
表紙カバーのことばより
著者の今西乃子氏は著書のはじめにこう書いています。
大切な人を失う苦しみは、言葉で言い表せない。
しかし、「苦しみが大きい」ということは、それだけ「大切な人に出会えた」ということだ。
故人がすばらしい思い出を家族に残した何よりの証拠だ。
本当に「救いようのない苦しみ」とは、そういった「大切な人に出会えなかった人」の中に芽生えるものなのだ。
このたびの取材を通して笹原さん、そして被災者の方々の生き方を見つめ、わたし自身の生き方を考えた。
わたしは生きている。
生きている今だからこそ、いい思い出をたくさんつくっていこう。
思い出は、永遠だ。
そして、彼らの言葉の一つ、ひとつ、涙一滴の真意を知り、ふたたびガレキの前で手を合わせた時、
ようやく・・・少し・・・ほんの少しではあるが・・・笹原さんの思い、そして被災者である彼らの深い悲しみに、わたし自身より添えるのではないかと思った・・・。
この出来事を忘れない・・・。
大切なのは、忘れないことなのである―。 今西乃子氏「はじめに」より抜粋
1月30日、この本の主人公でもある笹原留似子さんは社会に貢献した人をたたえる
今年度の「シチズン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれこうあいさつしました。
「お別れの場で、陰でお手伝いした。遺族の深い悲しみが勇気に変わりますように」
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