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2011年5月30日 更新
『日本人の叡智』磯田道史著 新潮新書 756円

先達の言葉は海のごとく広く深い。心に刻むべき98人の思索。

先達の言葉にこそ、この国の叡智が詰まっている。仁愛を決断の基本とした小早川隆景、一癖ある者を登用した島津斉彬、時間と進歩の価値を熟知していた秋山真之、教養の正体を見抜いていた内田百けん、学問を支えるのは情緒と説いた岡潔......。約五百年にわたる日本の歴史の道程で生み出された九十八人の言葉と生涯に触れながら、すばらしい日本人を発見する幸福を体感できる珠玉の名言集。

                                       新潮社

朝日新聞の「この人、その言葉」に連載コラムに加筆したもの。わたしの手帖にはその頃の切抜きがはさんである。明治の実業家森村市左衛門の言葉を磯田さんが以下のように説明してくれている。

『自分を鍛ふるために困難が湧いてくるのぢやと思へば、如何なる困難が来ても少しも辟易することなく、益々勇気が加はる。』人間の成功は財産の多い少ないではない。自ら顧みて良心にやましい所がなく正直な努力を誇りにする人になれば、周囲に信用され、心中の平和と愉快とをもって日々を楽しく暮らすことができるといっている。人生の目的を人格の完成とそれによる心の安定におく人間は強くまた幸せになれる。この一事は歴史家として断言できる。