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2020年12月10日
山陽堂書店メールマガジン【2020年12月10日配信】
山陽堂書店ではメールマガジン配信しています。
配信をご希望される方は件名に「配信希望」と明記のうえ、
sanyodo1891@gmail.com(担当 マンノウ)までご連絡ください。

山陽堂書店メールマガジン【2020年12月10日配信】

みなさま


先日友人に教えてもらった渋谷 ユーロスペースでの短編映像の上映会に行ってきました。
「広く知られていなくても、世の中にはおもしろいことをしている人がたくさんいるのだなぁ」と、
月並みな感想ですがそう思いました。
と、同時に「やっぱり良いものをたくさん見過ごしてきているんだろうなぁ」とも。
ただ、いろんなものを自分から求めにいくとすごく疲れてしまうということもこれまでの経験からわかっており、
「人に教えてもらって」だったり、「いつもと違う道を歩いていて」くらいの偶然なんかに、
いろんな出会いを委ねたいなぁなんて思ったりもしています。

さて、本日は現在当店ギャラリーで原画展を開催中の本を紹介します。
『翻訳目録』著 阿部大樹 / 絵 タダジュン(雷鳥社)
2020.12.10.1.JPG
http://www.raichosha.co.jp/release/
どのような本なのかと問われると、何と説明すればよいのか。
「精神科医であり翻訳も手がける阿部さんが溜めていた"言葉"たちの本」といったところでしょうか。

言葉の意味はたえず変わっていく。
書き留められるのは、その一瞬にもっていた意味だけだ。
―――言葉はいつまで、もぞもぞ動く?
2020年に日本翻訳大賞を受賞した、精神科医が"私的なノート"に書き溜める、
国や地域、時代をまたぐ味わい深いことばたちを、ひろく紹介する、ちいさな目録。
"名無しの翻訳"、"時代とともに消えた言葉"、"意味の移り変わり"など
私たちの、"くちのききかた"からこぼれた60個の欠片を、
版画家・タダジュンの挿絵とともにしずかに眺める。
(雷鳥社HP 書籍紹介より)

本に収められたのは、労働者のブルース、中国語の標語、万葉集の詩、生活の中に"あった"言葉など。

翻訳できない言葉なんてないのだ。
これが言いたくて、私はこの本を書きました。(本文より)


言葉を解説、というより解析してくれているところもあり、
自分が日常的に使っている言葉(ことば・コトバ)の意味に考えを巡らせました。
著者 阿部さんが書いた言葉と、版画家 タダさんの絵(版画)で各ページは構成されているのですが、
レイアウト(文字の組み方)がそれぞれのページで異なっていて、
装丁をされた宮古美智代さんが楽しんでつくられたのではないかと想像してしまいます。
(もちろん、いろいろ考えを重ねた大変な仕事だったとは思うのですが)
ほぼすべてのページに絵が載っており、タダジュンさんの作品もたくさん見られる贅沢なつくりです。
僕には書かれている言葉がわからないページがいくつかあったのですが、タダさんの絵に理解を助けてもらったりもしました。
本を読んでから原画を眺める時間というのも、また良かったです。
展示は12月26日(土)まで。

ちなみに、「紙魚」ってご存知でしたか?(読めますか?)
僕は本書で初めて知りました。

〈GALLERY SANYODO展示〉
現在開催中
◇「翻訳目録」刊行記念 タダジュン版画展 

期間:2020年12月7日(月)〜12月26日(土)
時間:平日11−19時 土曜11−17時 日曜定休 ※最終日は17時まで。
開廊時間は変更の可能性もありますので、ご来場前にご確認下さい。
詳しくはこちらよりご確認ください。
http://sanyodo-shoten.co.jp/news/2020/11/121226.html

〈郵送販売について〉
ご注文方法等詳しくはこちらよりご確認ください。
http://sanyodo-shoten.co.jp/news/2020/05/post-188.html


〈山陽堂珈琲 今週・来週の営業日〉
※12月10日(木)の営業時間が変わりました。

12月10日(木)13〜18時
12月11日(金)お休み
12月12日(土)11〜17時
12月16日(水)13〜19時
12月17日(木)13〜19時
12月18日(金)13〜19時
12月19日(土)11〜17時

SNSでも営業日をお知らせしています。
twitter:@sanyodocoffee
instagram:sanyodocoffee
ご入店は閉店の30分前までにお願い致します。
状況により営業日時が変更となることもございますが予めご了承ください。
※変更の場合は当店HPにてお知らせ致します。
山陽堂書店HP:http://sanyodo-shoten.co.jp/

今日の追伸は「七五三(中編)」です。
「七五三(前編)」は山陽堂書店HPブログよりご覧いただけます。
山陽堂ブログ:http://sanyodo-shoten.co.jp/blog/index.html
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた来週のメールマガジンで。


山陽堂書店
萬納 嶺

追伸


数日後。
「何故、かに道楽だけしか断ることができなかったのか」と自問しながら、
家電量販店でポートレートに適したカメラについてひと通り説明を聞いていた。
店を出てから「とりあえずまぁ」と思い、奴に電話をかけた。
(「七五三(前編)」より)

二つ目の呼び出し音で奴が出る。
「はい」
「こんにちは、まんのです」
「そう、ですね、知ってます」
「11月23日にSの娘の七五三の写真を撮ることになりました」
「はい」
「それは知っていましたか?」
「それは知りませんでした」
「22日の19時に西武線の○○駅に集合です」
「はい、わかりました」
さすがである。
こちらが何を説明しないまでも、指定された時間と場所に居ればいいということを心得ている。

七五三の前日、待ち合わせの駅に着くも奴の姿が見えず、電話をかける。
「どっちの改札にいる?」
「改札じゃないですね、ここは、えーと」
左から右へぐるりと見回し、180度を迎えるあたりでぴたりと目が留まる。
100メートルはあったろうか、人の間を縫うようにのばした視線の先、コンビニの明かりを背に見覚えのあるシルエットが真っ黒に浮かんでいる。
この距離でも正確に奴を捉えるこちらの精度がすごいのか、捉えられる奴がすごいのか。
電話口では奴がまだ喋っている。
「バスのロータリーがあって」
「もう大丈夫」
数メートル手前で奴もこちらに気づきぺこりと頭を下げる。
「本番は明日ですが我々は前日入りします。いまSがきます」
「はい、わかりました」
しばらくするとSが車で迎えにきた。
Sは車を降りるなり、笑ってしまっている。
「ごり男も、来てくれたんだね」
恐縮した様子でごり男が答える。
「よくわかってないんですが、とりあえず来ました」
Sの乗ってきたベンツに乗り込み、いま一度尋ねる。
「(経済的に)余裕あるんだからさ、プロに頼めよ」
「うん、でもYちゃ」
「わかったよ」

家にあがり、SがYちゃん(Sのワイフ)の背後に隠れているR(Sの娘)に僕らを紹介する。
「ほら、まんのうくんとごり男くんだよ」
RはYちゃんの足に顔を押し付けながら、こちらを見ないようにしている。
「恥ずかしいよねー」と笑いながらキッチンへ向かうYちゃんのあとにぴたりとくっついてRは行ってしまった。
そらそうだ。
いきなり現れたおじさんふたりを受け容れられるような3歳児は、3歳児じゃない。

Yちゃんが用意してくれた夕ごはんをみんなで囲みながら、今日は伊勢丹写真室で撮影してきたという話を聞く。
(おいおい、明日もプロに頼んでくれよと思いながら話を聞く)
お化粧する時も、衣装に着替えるときも、撮影のときもRはご機嫌だったとのこと。
「R、今日楽しかったんだ?」
「R、お化粧もしたの?」
「R、あしたは僕が撮ってもいいかな?」
僕の質問に言葉は返ってこないものの、少しずつRと目が合うようになる。
ちょっとするとRはパパママにやたらと話しかけるようになり、声も少しずつ大きくなってきた。
普段使っているスプーンではなく、鍋用のおたまを使い大きな口を開けてかっ喰らいはじめたあたりに
警戒心が薄らいできたことやテンションの高まりが伺える。
「R、閻魔様みたいにごはん食べるんだね」
「・・・」(なおもおたまでごはんを食べている)
「あしたは僕が写真撮ってもいい?」
「・・・いいよ、あしたいるの?」
「あしたもいるよ。きょうはここにとめてもらうよ」
「このひと(ぼくのこと)と、あとごりらさんもとまるの?」
ごり男が「さん」付けされていることにみんなが笑い、ごり男が黙って笑っているだけなので「ごりらさんもだよ」と僕が応えた。

お風呂から出てきたRはSに髪を乾かしてもらうと、
僕らの寝床として用意されたリビングのマットレスにタオルケットをきれいに並べてくれるなど忙しく働いた。
「もう寝る時間だよ」とYちゃんに手を引かれて2階の寝室に向かうRに、みんなでおやすみと声をかけると、Rは振り向いてもう一度訊いた。
「このひとと、ごりらさんもここにねるの?」
「このひともね、ごりらさんもね、ここでねるよ」
このひとは「またあしたね」と言葉で見送り、横ではごりらさんが手を振っていた。
(「七五三」(後編)につづく...)
ひとつひとつ思い出しながら書いていたらずいぶん長くなってしまいました。すいません、後編に続きます。)

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