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2020年10月29日
山陽堂書店メールマガジン【2020年10月29日配信】
山陽堂書店ではメールマガジン配信しています。
配信をご希望される方は件名に「配信希望」と明記のうえ、
sanyodo1891@gmail.com(担当 マンノウ)までご連絡ください。

山陽堂書店メールマガジン【2020年10月29日配信】

みなさん

こんにちは。

今日は今週当店に届いたばかりの新刊本を。

「内緒にしといて」長井短(晶文社)
2020.10.29.1.JPG
https://www.shobunsha.co.jp/?p=5885
演劇モデルの長井短(ながいみじか)さんの初めての著書(エッセイ)です。
"モテ"への憧れ(正確には"憧れのようなもの"なのではないかと思う)を抱きつつ、
とはいえそのために自身をそちら側に寄せることへの違和感との葛藤があり、
「モテる振る舞いをしている女に嫉妬してこじらせる」というところまでいったという著者。
まえがきにはこう書かれています。

この本はたぶん、私長井短の心の中というか、その時その時に感じていた嬉しさだったり悲しさだったり怒りだったりが、主に恋愛の観点から書かれています。

著者は本書の中で"モテ"について分析して解説。
豊かな想像力(妄想力)を駆使して「逆にモテる過ごし方講座」まで開講しています。
(「逆にモテる過ごし方講座」はおフザケに皮肉を少々まぶしたような講座です。)
全体を通して、主にこの"モテ"問題について書いてはいるのですが、著者はもっと大きな、
身近な社会通念に対しても「え、なんで?」を投げかけています。
感じた違和感や抱いた疑問に対し、自分自身の体験とも交えながら考察して各コラムはまとめられていくのですが、
読んでいるうちに酒場で一緒に飲みながら話を聞いているような心持ちになりました。(著者は飲み会好きとのこと)
キャラクターが伝わってくる文章には等身大の著者が感じられ、「その時の自分はそう考えた」という前提で書かれていることがまた良いなと思いました。
再び、まえがきにある言葉を。

矛盾した、沢山の自分を丸ごと愛して生きたいと思って、この本を作りました。
今の自分とは相入れない沢山の自分のことも、未来にちゃんと引きずって生きたいのです。

今と未来(過去と今)で思うことや考えることが異なってしまうこと、それもまた良しであると。
いつかその考えが改まったとしても、著者はその時にどう感じどう考えたかを大切にしたいと考えているのだろうと思いました。
それは、「未来の自分は過去の自分を受け容れますよ」と、今の自分が約束することともいえそうです。
僕も誤りや過ち(に伴う恥)の多い人生を送っており、先に立たなかった後悔も数知れずですが、
「それもすべて自分だからなぁ」と開き直れたときに生きやすくなったことを思い出しました。
そのときにはそのようにしか選択できなかった(考えられなかった)のだから、仕方ないかなと。

それから。
あとがきにあった一行にも著者の人柄を垣間見ました。

本当の気持ちって、たぶん丸出しにお披露目すればいいってもんじゃなくて、人に届いてしまう責任を抱えながらお披露目するものなのだ。

子供の頃から本が大好きだったという著者は本を作ることは夢だったとのことですが、
「本には、裸ってイメージがあって、」と嬉しい反面怖れを感じたとも書いています。
であるならば、どうかこれからも書き続けて欲しいと僕は思います。
現在20代の著者が歳を重ねながら何をどのように考えるのか、等身大の正直な言葉でこれからも"長井短"を届けて欲しいです。

〈GALLERY SANYODO展示〉

◇「みぬくま」展 志岐奈津子×ナイトウカズミ
期間:2020年11月10(火)~19日(木)
時間:平日11-19時(土曜11-17時/日曜定休)※最終日は17時まで。
志岐奈津子(ライター)とナイトウカズミ(イラストレーター)による二人展。
作品の展示を行うとともに、会場に朗読音声を流します。
「みぬくま」は、書店に棲息する小さなクマたち。
いつもは文庫本に隠れている「みぬくま」たちがギャラリー山陽堂で、その姿をあらわします。
そして、もしかすると、山陽堂書店のお店のどこかにも、みぬくまが潜んでいるかもしれません。
詳しくはこちらよりご確認ください。
https://sanyodo-shoten.co.jp/gallery/schedule.html#1096

◇第13回山陽堂ブック倶楽部(オンライン)
課題本:「居るのはつらいよ」東畑開人(医学書院)
https://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=106574
精神科デイケア施設に勤めることになった臨床心理士の著者。
ただ居ることでケアしている?ケアされることでケアしている?
戸惑い苦悩し笑わされた日々の末に辿り着いた「ただ、いる、だけ」の価値とそれを支えるケアの価値とは?
巻き起こった出来事とともにエッセイという形で綴られる。

日程:11月24日(火)19時より20時30分頃まで
参加人数:8人
参加費:1,000円
申し込方法:sanyodo1891@gmail.com(担当 マンノウ)宛てに「10月山陽堂ブック倶楽部参加希望」と明記の上ご連絡ください。

〈郵送販売について〉
引き続き承っております。
ご注文方法等詳しくはこちらよりご確認ください。
https://sanyodo-shoten.co.jp/news/2020/05/post-188.html

〈山陽堂珈琲 今週・来週の営業日〉
10月28日(水)13〜19時
10月29日(木)13〜19時
10月30日(金)13〜19時
10月31日(土)11〜17時
11月4日(水)13〜19時
11月5日(木)13〜19時
11月6日(金)13〜19時
11月7日(土)お休み ※書店は営業
SNSでも営業日をお知らせしています。
twitter:@sanyodocoffee
instagram:sanyodocoffee
ご入店は閉店の30分前までにお願い致します。
状況により営業日時が変更となることもございますが予めご了承ください。
※変更の場合は当店HPにてお知らせ致します。
山陽堂書店HP:http://sanyodo-shoten.co.jp/

今日の追伸は「エラそうにすまん」です。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた来週のメールマガジンで。

山陽堂書店
萬納 嶺


追伸

日曜日の夜。
ランニング中に自動販売機の前でたむろしていた小学生たちの前を通り過ぎる瞬間、
7、8人いたうちのひとりから「ウェーイ」とふざけた調子の声があがった。
「(みんなといるときに)こうやって調子に乗っちゃうことあったなぁ」と、
自分が小学生だったときのことを思い出してそのまま走り続けた、のだがしかし。
4、50メートルいったあたりで「あなたの○○○(陰毛の通称)何センチですかー!」と大きな声が背中に届き、踵を返した。
逃げたりしないでくれるといいけどなぁと思いながら走って戻り、少し手前からゆっくり歩いて彼らの前へ進んだ。
彼らはしんと静まり返り、緊張した面持ちでこちらを見ている。
黙って彼らを見回す数秒の間に、ひとりの男の子が他の子の後方にさっと隠れた。
「君は友だちを売るのか?」と思った言葉を飲み込んでから、
「怒っているわけじゃなくてさ」と、ひと言ふた言。

家までの残り1キロを走っているあいだ「何をエラそうに...」と自身の言動を省みながら、
「でも、もし彼らに何か良くないことが起きたとしたら、それこそ後悔してもしきれないから」
だから今回はエラそうな振る舞いもご容赦くださいと、もう1人の自分は許しを乞うた。
2020年10月22日
山陽堂書店メールマガジン【2020年10月22日配信】
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配信をご希望される方は件名に「配信希望」と明記のうえ、
sanyodo1891@gmail.com(担当 マンノウ)までご連絡ください。

山陽堂書店メールマガジン【2020年10月22日配信】

みなさん


こんにちは。
東京新聞の朝刊リレーエッセイ「私の東京物語」のコーナーに、先月末から小泉今日子さんが全20話の連載を書いています。
原宿でスカウトされて芸能界入りし、原宿に住んでいた時間も長いというキョンキョン(小泉今日子さん)。
雑誌「SWITCH」で2007年から2016年まで連載していた「小泉今日子 原宿百景」を再構成して刊行されたエッセイがこちら。
「黄色いマンション 黒い猫」小泉今日子(スイッチ・パブリッシング)
2020.10.22.1.JPG
https://www.switch-store.net/SHOP/BO0071.html
(前略)私は原宿を歩きながら、過去や、未来や、自分の心のなかを旅した。
この本はその私の旅の記録です。今だからかけること、今しか書けないことが詰まっています。(後略)
(はじめにより)

著者の出会ってきた人たちや猫たち。
回想される出来事やその時に感じたこと。
厚木での小中学生時代のちょっとやんちゃな話やユミさん(母)の話に笑わされたかと思えば、
ある日いなくなってしまった男の子の話に切なくなってしまったり
原宿のまち並みを交えながら語られるひとつひとつのエピソードからは、
家族や他者への優しさ、若くから大人の世界で生き抜いてきた逞しさや培ってきた強さ、
自身の感情に素直に行動できる潔さなど、著者の人としての魅力が伝わってきます。
「人や猫とのひとつひとつを、こんな風に心に留めていられるなんて、キョンキョンはなんてかっこいい人なのだろう」
数年前にこの本を読んだときと同じことを思いました。

東京新聞の連載を読んでいると、キョンキョンをますますかっこよく感じます。
出てくるかなぁと少し期待していた和田誠さんとのことも書かれていました。
本書の装丁は和田誠さんです。

〈GALLERY SANYODO展示〉

◇峰岸 達 個展 「画文集 芸人とコメディアンと」原画展
現在開催中(〜10月24日まで)
高田文夫氏(放送作家)と峰岸達(イラストレーター)が初めてタッグを組み、
二人が見て聴いて体験した笑いの戦後史、画文集「芸人とコメディアンと」の原画31点を展示しています。
詳しくはこちらよりご確認ください。
https://sanyodo-shoten.co.jp/gallery/schedule.html#1088

◇「みぬくま」展 志岐奈津子×ナイトウカズミ
期間:2020年11月10(火)~19日(木)
時間:平日11-19時(土曜11-17時/日曜定休)※最終日は17時まで。
志岐奈津子(ライター)とナイトウカズミ(イラストレーター)による二人展。
作品の展示を行うとともに、会場に朗読音声を流します。
「みぬくま」は、書店に棲息する小さなクマたち。
いつもは文庫本に隠れている「みぬくま」たちがギャラリー山陽堂で、その姿をあらわします。
そして、もしかすると、山陽堂書店のお店のどこかにも、みぬくまが潜んでいるかもしれません。
詳しくはこちらよりご確認ください。
https://sanyodo-shoten.co.jp/gallery/schedule.html#1096


〈山陽堂珈琲 今週・来週の営業日〉
10月22日(木)13〜19時
10月23日(金)13〜19時
10月24日(土)11〜17時
10月28日(水)13〜19時
10月29日(木)13〜19時
10月30日(金)13〜19時
10月31日(土)11〜17時
SNSでも営業日をお知らせしています。
twitter:@sanyodocoffee
instagram:sanyodocoffee
ご入店は閉店の30分前までにお願い致します。
状況により営業日時が変更となることもございますが予めご了承ください。
※変更の場合は当店HPにてお知らせ致します。
山陽堂書店HP:http://sanyodo-shoten.co.jp/

〈郵送販売について〉
引き続き承っております。
ご注文方法等詳しくはこちらよりご確認ください。
https://sanyodo-shoten.co.jp/news/2020/05/post-188.html

今日の追伸は「いまはむかしのかえりみち」です。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた来週のメールマガジンで。

山陽堂書店
萬納 嶺


追伸

お店を右にでてから表参道を原宿方面に向かって歩く。
最初に見えてくる信号の手前、右にはマクドナルド。
入り口が大きく開放されたお店で、レジと同じ数だけ今日も3つか4つ列ができている。
左を向くと道路を挟んだ反対側にお母さんに教えてもらった「モリハナエビル」が見える。
一度も中に入ったことはないけれど、大人しか入ってはいけない感じがして、目にするだけで少し緊張する。
信号を渡って表参道をまっすぐ降りていくとたくさんの人に埋もれてしまいそうで、
かといって同潤会アパートと神宮前小学校の裏にある道は暗くてちょっと怖い。
信号は渡らず、マクドナルドに沿って右に曲がると、「peek-a-boo」と書かれた看板が目に入る。
マクドナルドと同じ建物の地下にあるのはフランス語の「いないいないばあ」を名前にした美容室。
これもお母さんに読み方を教えてもらった。お母さんは「peek-a-booさん」と、さん付けで呼ぶ。
「ぴーくあぶー」と頭でつぶやきながら道を進んでいくと左側に見えてくるAPETITO。
行くたびにどれにしようかちょっと考えるのだけれど、本当はいつも最初からミルクフランスと心に決めている。
すれ違う車同士ががいつも大変そうなT字路を左に曲がるとオレンジ色のロイヤルホスト。
外食をすることはほとんどないので、親戚のおばちゃんたちが遊びに来きときに行くくらい。
セットを頼むと付いてくるコーンポタージュには四角くて固いパンのかけらみたいなのがのっていて、
それだけ先に掬って食べるのが好きだったりする。
ロイヤルホストの前を通る時はおいしそうな匂いに包まれるので、いつもぐうとお腹が空いてくる。
今日はおばあちゃん家で晩ごはんを食べる日。
先に帰ったおばあちゃんはなにをつくってくれているかなぁと、少しだけ早足で家に向かう。

キョンキョンのエッセイを読んで思い出した、20年以上前の、いまはもうむかしのかえりみち。
2020年10月15日
山陽堂書店メールマガジン【2020年10月15日配信】
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山陽堂書店メールマガジン【2020年10月15日配信】


みなさん


こんにちは。
先週今週はやることが重なり文字をあまり追えなかったのですが、
そんな時に小峰書店(出版社)の方がお店に来て紹介してくださり、
「良いなぁ」と心落ち着かせてくれた本がこちら。
「なまえのないねこ」文 竹下文子 / 絵 町田尚子(小峰書店)
2020.10.15.1.JPG
https://www.komineshoten.co.jp/special/namaenonaineko/
2019年4月に刊行されてからいくつかの賞を受賞して話題にもなっており、
今年9月で早くも13刷のベストセラー絵本です。
主人公はなまえのない、いっぴきのねこ。
おなじまちのねこはみんなそれぞれに"名前"で呼ばれています。
「いいな。ぼくも なまえ ほしいな」
自分の名前を探し始めたねこが最後に気づいた、本当に欲しかったものとは...

僕の人生に猫はほとんど関わっていませんが、
部屋の小さなベランダにごくごく稀に猫が訪れます。
(訪れるねこはいつも違う、と思う)
窓越しに目を合わせると「ん?」みたいな表情をするので、
こっちも「はい?」と応えたまましばらく目線を外さずにいると、
たいてい向こうが「付き合ってられんわ」といった調子で出て行きます。
こちらがひとり残された気持ちになってしまっていることは、
去っていく彼らにとって知る由もないことですね。

今日の追伸は「1秒のおかげ」です。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた来週のメールマガジンで。

山陽堂書店
萬納 嶺

やることがいくつもあり、「ちょっと疲れてしまいそうだな」と思ったので、
「生きていて良かったことでも思い出すか」と、店からの帰り道に自転車を漕ぎながら考えていた。
(物の言い方が大仰ですけど)
思い出したのは、少し涼しくなってきた最近の出来事。

道路を挟んだ反対側の道に、青いユニフォームを来た少年が自転車で青山方面に向かっている姿が目に入った。
一昨年までサッカーを教えていたMだと遠目でもわかったものの、
広い青山通りを挟んだ反対側まで声はかけられず、
その日は練習に向かうその姿を遠くから眺めるしかなかった。

数日後。
青山一丁目の交差点。
自転車にまたがり赤坂方面に走る車道で信号待ちをしていると、
横断歩道の赤坂御所側(交番の前)で信号待ちをしているMの姿があった。
今日も自転車に乗り、青いユニフォームを着ている。
青山一丁目の交差点は大きいので、道路の同じ側でも横断歩道と(直進する)車道には距離があり、すれ違いざまに声をかけられる距離とはいえなかった。
「今日も声はかけられないなぁ」と思いながら、青になった信号を進み始めてからもMのほうを見ていると、少しだけ左に顔を向けたMと目が合い、1秒だけ手を振り合った。

今日だって明るい朝を迎えられたのは、Mの振ってくれた手が僕の名を呼んでくれていたからである。
2020年10月 8日
山陽堂書店メールマガジン【2020年10月8日配信】
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山陽堂書店メールマガジン【2020年10月8日配信】


みなさま


こんにちは。
先週10月1日のメールマガジン配信日は中秋の名月でした。
団子の追伸に「月見団子とちょうど合って、」と返信をくださった方もいて、
自転車で帰りながら何度か月を見上げていました。
(満月ではなかったらしいのですが、大きく"丸"としていました。)

さて、来週10月13日(月)からGALLERY SANYODO(山陽堂書店2階)にて
峰岸 達 個展 「画文集 芸人とコメディアンと」原画展が開催されます。
2020.10.8.1.JPG
https://www.futami.co.jp/book/index.php?isbn=9784576191966
二見書房さんから刊行された本書は、
古今のお笑い芸人を峰岸達氏がイラストレーションで、高田文夫氏が文章で紹介しています。
少年時代から笑芸を愛してきたふたりによってだからこそ形にできた一冊。
峰岸氏の手書き文字で添えられたひと言にも芸人さんへの愛を感じます。
戦前に活躍していたという名前だけは聞いたことのある芸人さんも出てきて、
現在に繋がるお笑い界の系譜を知ることもできます。
個人的には選び抜かれた31組の中に伊東四朗さんとイッセー尾形さんが入っていることが嬉しかったです。

筋金入りのお笑いファンである峰岸氏によって描かれた似顔絵原画を是非ご覧にいらしてください。
会期等詳しくはこちらから。
http://sanyodo-shoten.co.jp/gallery/schedule.html#1088
ご本人の在廊日は峰岸氏の主宰する MJイラストレーション塾HPよりご確認いただけます。
http://minegishijuku.com/?p=22758
※本を購入された方には、峰岸氏のイラストレーション(印刷)にお二人の肉筆サインの入ったカードをプレゼントいたします。(数量限定)
峰岸氏が山陽堂書店を描いた作品も店内に展示し、こちらのポストカードも販売予定です。
峰岸さん作品.jpg
みなさまのご来場をお待ち申し上げております。

◇第12回山陽堂ブック倶楽部(オンライン)
課題本:「コンビニ人間」村田沙耶香(文春文庫)
日程:10月27日(火)19時より20時30分頃まで
参加人数:8人
参加費:1,000円
申し込方法:sanyodo1891@gmail.com(担当 マンノウ)宛てに「10月山陽堂ブック倶楽部参加希望」と明記の上ご連絡ください。
詳しくは添付のチラシをご覧ください。

〈課題本紹介〉
普通とは? 正常な人間とは?
コンビニ店員としてマニュアル通りに働くことで、
自身の存在を確かめながら生きる主人公。
マニュアルにないことに対してはどうすればいいのかわからない。
そんな時は周囲と協調することでその場を凌いできたが...
 第155回 芥川賞受賞作、世界各国でベストセラー


今日の追伸は、「早すぎた落語」です。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた来週のメールマガジンで。

山陽堂書店
萬納 嶺


追伸

記憶にある初めての落語は、6歳か7歳のときに祖母と母に連れられて行った大きなホールでの会だった。
(本当はその前にも1度連れて行ってもらったらしい)
最前列の真っ正面で、座布団のうえで喋りはじめた人とすごく距離が近かったということと、
にもかかわらず途中から記憶をなくし、終演後に「よく眠れた」と着物姿の祖母に語ったことを覚えている。
あのときの公演は読売ホールで行われた、いまでは人間国宝となった噺家さんの一門会だったと、あとになって母から聞いた。

「おばぁちゃんは落語が好きなんだ」と知ったことがきっかけだったので、その頃のことだったと思う。
何かの拍子に手にしたある噺家さんの落語CD-BOXのチラシを見せながら「みんなでこれをおばあちゃんにプレゼントしよう」と母に提案した。
一緒に落語に行った母と僕とで贈りたいと考えて言ったのかもしれないし、
自分では買えないことを理解したうえで、あざとく「みんなで」と言ったのかもしれない。
そのあと母とどういうやり取りがあったかは思い出せないけれど、
たしか2万円近くしたそれを母は購入してくれた。(母にとっては痛い出費だったかもしれない)

祖母に渡したCDのジャケットに描かれている噺家さんはテレビで見たことがあるような、ないような。
祖母の横で一緒に聴いてみるとあまりに早口で、聞き慣れない言葉も相まって、僕には何を喋っているのかほとんどわからなかった。
当時の僕には早すぎた立川藤志楼こと高田文夫氏の落語も、落語好きとなったいまの耳ならついていけそうな気がする。

2020年10月 1日
山陽堂書店メールマガジン【2020年10月1日配信】
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配信をご希望される方は件名に「配信希望」と明記のうえ、
sanyodo1891@gmail.com(担当 マンノウ)までご連絡ください。

山陽堂書店メールマガジン【2020年10月1日配信】

みなさま

こんにちは。
10月1日(水)から10月10日(土)まで、
ヤッホーブルーイングさんの「#本にあうビール」企画に参加させていただきます。
(※他の参加書店さんは11日まで。)
この企画は参加書店が3種類(よなよなエール・水曜日のネコ・インドの青鬼)のビールに合う本を紹介するというもの。
3つのうち、アルコール度数が高く、インパクトある苦味とコクを備えた個性派ビール「インドの青鬼」に合わせて僕が紹介したのがこちら。
「砂の女」安部公房(新潮文庫)
2020.10.1.1.JPG
https://www.shinchosha.co.jp/book/112115/
砂丘へ昆虫採集に出かけた主人公の男性が帰りのバスを逃し、
一泊だけ世話になろうと老人に連れられて入った砂穴の中の一軒家
そこには女がひとり。
翌日、男はこの砂穴に閉じ込められたことを知る。
あらゆる手段で脱出を試みるも、穴の上から男を妨害する部落の人々、
そしてひきとめようとする女。
昼夜問わず砂の降り続けるその家で、「家を守る」ためにその使命を受け容れている女と、
ただひたすらに砂を掻くことになる男の行く末は...

男の口や体のあらゆる部位に砂がざらついている描写や、
男が精神的にも砂に埋もれていくその様子に、強烈な喉の渇きを覚えます。
「砂の女」片手に「インドの青鬼」で重たいひと口を。

期間中の山陽堂珈琲営業日(10月1・2・3・7・8・10日)には上記3種類のビールもご注文いただけます。
(各種600円での提供となります)
よなよなエールには「生きていてもいいかしら日記」北大路公子(PHP文庫)
水曜日のネコには「今日のがっちゃん」え 平澤一平 さく 益田ミリ(ミシマ社)を合わせて紹介しています。


〈今週のおすすめ本〉
『乳房』伊集院静(文春文庫)
2020.10.1.3.JPG
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167546120
とにかく〝カッコいい"のである。
主人公の男性は男の弱さも甘えもズルさも持ち合わせていながら
伊集院氏の手にかかると見事なまでに魅力的な男性に仕上がる。
「完璧な奴なんてつまんないよ」そんな気持ちにさせる短編集。
(山陽堂書店 林)


〈山陽堂珈琲 今週・来週の営業日〉
10月1日(木)13〜19時
10月2日(金)13〜19時
10月3日(土)11〜17時
10月7日(水)13〜19時
10月8日(木)13〜19時
10月9日(金)お休み
10月10日(土)11〜17時
SNSでも営業日をお知らせしています。
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今日の追伸は、「砂の団子」です。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた来週のメールマガジンで。

山陽堂書店
萬納 嶺


追伸

8月の日曜日。
今年3月までサッカーのコーチをしていたチームが、
中止になってしまった夏合宿の代わりに浜辺のある都内の公園に遊びにいくとのことで、「来ませんか?」と連絡をいただいた。
活動休止中にチームを離れることになってしまい子どもたちに何も言わないままになってしまっていたので、
挨拶がてら午後から遊びに行かせてもらうことにした。
公園に着くと午前中アスレチックで遊んできた彼らは昼食中。
反応を期待しながら「久しぶり!」と声をかけると、「なんだ、まんのコーチじゃん」という声が挙がった。
「日本代表の選手がくるかもしれないよと伝えてたんですよ」と、コーチ。
彼らはがっかりするわ、こちらも何か申し訳ないわで、久しぶりの再会はいたたまれない状況から始まった。

昼食が済むとみんなは一斉に浜辺へと駆け出した。
膝までしか入ってはいけないという浜辺公園のルールのもと、
水遊びを楽しむ子もいれば、砂を掘って水路をつくったり、貝(とかゴミ的なサムシング)を集めたり、
いくつか遊びをローテーションしながら楽しんでいるなか、
ひたすら砂団子をつくっている子がひとりいた。
浜辺遊びが始まってしばらく経ったころ、その子が「これ」と見せてきた砂団子が、
あまりにも「丸」くて思わず「綺麗」と言葉が漏れてしまい、しばらく見惚れてしまった。
その手でつくられたことがにわかには信じられなくて、
「あーこれはすごいな、本当にすごいよこれは、美味しそうだし」と何度も感動を伝えていると、
何人か集まってきて彼らも競って砂団子をつくり始めた。
「ここの砂でつくるといいよ!」などと声をあげながら熱心に取り組み始めたと思ったら、
彼らは「はいこれ!」と、砂団子をこちらに手渡してすぐに他の遊びに移っていった。
それからもひとりだけは、浜辺での遊び時間が終わるまで、ひとつの団子を丸め続けていた。

その後、「持って帰る」とその子がビニール袋に入れていた砂団子は次の遊び場への移動中に壊れてしまったようで、
ふたつに割れたそれを見て僕は思ってしまったところがあったけれど、本人は意外と淡々としていた。

その子は忘れてしまうかもしれないけれど、団子のことは自分がずっと覚えていようと思っている。
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