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2020年7月30日
山陽堂書店メールマガジン【2020年7月30日配信】
山陽堂書店ではメールマガジン配信しています。
配信をご希望される方は件名に「配信希望」と明記のうえ、
sanyodo1891@gmail.com(担当 マンノウ)までご連絡ください。

山陽堂書店メールマガジン【2020年7月30日配信】

みなさま

こんにちは。
先日の朝日新聞「男のひといき」欄に「ぬかみそデビュー」というタイトルで、
妻に代わりぬかみそ作りを始めた男性の楽しんでいる様子の投書がありました。
「取り寄せたぬか床に、昆布やキュウリ、ナス、カブ...」
そうそう、おもしろいんですよね。
八百屋さん行くと、「これは漬けられるだろうか」という目線(ぬかみそ目線)で野菜見ちゃいますよねぇ。
男性は86歳。
僕はデビューが20年早かったと思っていましたが、50年早かったのでしょうか。
ちなみに、前回ぬかみそについて書いた際(5月末)に「ぬか漬けは私も大好きで」と男性デザイナーさんからご連絡いただきまして、
おすすめですと教えてただいたミニトマトのぬか漬けを試したところ、これが美味でした。
僕は湯むきしてから漬けるのですが、皮のままでも良いようです。
夏におすすめです。
と、あんまりぬかみそが過ぎると何のメールマガジンなのだかわかりませんので、
そろそろ本の紹介を。

「サコ学長、日本を語る」ウスビ・サコ(朝日新聞出版)
2020.7.30.1.JPG
著者であるサコ氏はマリ共和国出身。
中国留学を経て日本に留学し、現在京都精華大学の学長を務めています。
ほとんどを割愛したこの経歴だけでもおもしろい予感がします。
家庭ではマリ式の生活を送り、通ったカトリックの私立小学校では西洋式(フランス)教育システムの中で学び、
大学時代は留学先の中国や日本で生活してきたサコ氏。
日本人女性と結婚し、大学教員として教育にも携わるようになり、
より日本の文化に根ざした日々を送るなかで、
日本の教育システム(主に語られるのは大学教育)や慣習への違和感に対して「なんでやねん!」と疑問を呈します。
そのツッコミはそのまま「本質的にどうなのよ?」と訊かれているようです。
サコ氏からしたら「なんでやねん!」な環境のなかで育ってきた自分や、
いま教育(や子育て)に携わっている人にとっては耳に痛いツッコミもありますが、
サコ氏の指摘がすべて正しいかはともかく、正しいかどうか、本質的に合っているかどうか省みてみることは大事だなと思いました。

長くなってしまうので、本に書かれていることと自分の経験とを一箇所だけ引用して話したいと思います。
サコ氏は6年間中学生にサッカーを教えていたことがあったとのことでした。
僕も大学4年間と、卒業してからしばらくブランクを挟んだのち今年の3月までの3年間、
週に1回小学生・中学生にサッカーを教えていました。
サコ氏は「練習には基礎よりもミニゲームを多く取り入れるのが好きだ。ミニゲームをやると、それぞれの子どもの面白さが出てくる。」といい、
ヘディング(頭でボールを扱う技術)できないスター選手もいるのだからと、
ドリル的な基礎練習よりも実践的なゲーム形式の練習を好む様子が書かれています。
僕はどうだったかというと、小学校高学年以上に教えるときには最初の10分を使って基礎練習をみっちり教えていました。
それは小学生の時に身につけた基礎技術がその後カテゴリーが上がっていったなかでも大いに役立ったからでした。
基礎があってこそ積み上げられるものがあると固く信じているところがありました。
選手たちのレベルと選手自身が求めているレベル、選手と指導者(コーチ)との関係などなど、
どのような練習をすべきかは複数の要素によるところもあるので、
サコ氏と僕のした指導のどちらが正しいかはわかりませんし、ここでそういった話をしたいわけではなく。
僕が思ったのは、
「自分がそのように指導されて良かったと思ったことが、必ずしも良いとは限らない」ということがわかっていたのかということです。
おそらく、指導していた時にそのことは頭になかったと思うので、それは良くないことだったなと反省しました。
自分のなかでの「当たりまえ」は、本当に厄介なもののひとつです。
解説では内田樹さんがサコ氏の視点の大切さをおもしろく説明してくれています。

〈今週のおすすめ〉
今回はひとり出版社 小さい書房の安永さんに新刊をご紹介していただきます。
安永さんのその明るいキャラクターに、山陽堂書店はいつも元気をもらっているようなところがあります。
小さい書房さんのHPで「立ったまま寝たことがある」と書かれていて、
「安永さんなら、たしかにありそうだなぁ」と思いました。(失敬)

『地球の上でめだまやき』(山崎るり子著・ 装画/牧野千穂)
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https://chiisaishobo.com/chikyunouedemedamayaki/
本書は、暮らしを詠んだ詩集で、
「べんとうばこ」「名前のない家事」「銅像」「娘とランチ」「目玉焼き」など約30編を収録しています。
山崎るり子さんの詩は、日常をていねいに味わう方法を教えてくれます。
小さなできごとに光をあてて、見えていなかったものを浮かび上がらせます。
折しもコロナ禍で日常の尊さに気づかされた今、
自分の暮らしや生き方を見つめるきっかけになれば幸甚です。
装画は、第50回産経児童出版文化賞ニッポン放送賞や、第40回講談社出版文化賞さしえ賞受賞の
人気イラストレーター牧野千穂さん。
贅沢な1枚絵のカバーも魅力です。

本をつくる時、頭の中にはずっとキャッチコピーを置いている。
コピーは企画当初から変わらない時もあるし、
原稿が完成した後に「これだ!」というベスト案が浮かぶ場合もある。
『地球の上でめだまやき』の企画をスタートしたのは去年の春だった。
暮らしのできごとを書き留める日記のような詩集をめざして、
著者の山崎るり子さんと手紙をやりとりし、一年かけて原稿が完成した。
(山崎さんはパソコンを使わない)。
いよいよ装丁の作業に入ったころ、コロナ禍が起こった。
東京では学校が休みになり、外出は自粛、買い物は三日に一度に制限...と、
あっという間に暮らしが激変した。
時間が止まったような中で、刊行へ向けて作業を続けた。
5月下旬にイラストレーターの牧野千穂さんからカバー用の原画を受け取り、
神保町の印刷会社に運んだ時の写真がこれ。

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緊急事態宣言下で、いつも混み合う車内はガラガラ。
ゴーストタウンのようだった。
車窓に目をやると、大きな原画を運ぶ私がぽつんと映っていて、
こんな異様な空気に包まれて本を作ることはもうないだろうな、と思った。
だからだろう。『地球の上でめだまやき』のキャッチコピーは、
自然に心に降りてきた。シンプルだけどこの言葉以外に見つからない。
――日常は、尊い――
『地球の上でめだまやき』(山崎るり子著・ 装画/牧野千穂)7月29日発行です。
どうぞよろしくお願いいたします。

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3階喫茶営業のお知らせ〉

座席数は4席です。

手洗いのご協力をよろしくお願い致します。 

【8月前半までの喫茶営業日】

・7月29日(水)13〜19時
・7月30日(木)13〜19時
・7月31日(金)13〜19時
・8月1日(土)11〜17時
・8月5日(水)13〜19時
・8月6日(木)13〜19時
・8月8日(土)11〜17時
ご入店は閉店の30分前までにお願い致します。
状況により営業日時が変更となることもございますが予めご了承ください。
※変更の場合は当店HPにてお知らせ致します。
山陽堂書店HP:http://sanyodo-shoten.co.jp/

◇第10回山陽堂ブック倶楽部(オンライン)
しばらくお休みしておりましたブック倶楽部(読書会)をオンラインで再開します。
参加者それぞれが本の感想を気軽に話す会です。

日程:8月31日(月)19時より20時30分頃まで
参加人数:8人
課題本:「青が破れる」町屋良平(文春文庫)
参加費はございませんが、次回9月のブック倶楽部より当店での書籍購入が参加条件となります。
申込方法:sanyodo1891@gmail.com(担当 マンノウ)宛てに「8月 ブック倶楽部参加希望」と明記の上ご連絡ください。
当日の参加方法等を折り返しお伝え致します。

〈作品紹介〉
この夏、彼女が死んで、友達が死んで、友達の彼女が死んだーー
秋吉、ハルオ、とう子、夏澄、梅生。5人の不定の生が紡ぎだす鮮烈のデビュー作。選考委員絶賛!第53回文藝賞受賞作。
町屋良平の文章には独特の味わいがある。
人によっては、それを斬新と感じたり、あざとく思ったり、賛否両論あるのではないだろうか。
あえてどのような文章とはここには書かない。ただ決して難しい文章ではないので、まずは読んでみてほしい。
芥川賞を受賞した『1R1分34秒』、そして『ショパンゾンビ・コンテスタント』と読み継いでいくと、ますますその文体の進化を感じ取ることができる。読み慣れていくにつれ、その味わいが心地よくなってくる。この"町屋文体"だからこそ伝わってくるものがある。
『青が破れる』はデビュー作であり、その文体の特徴も、まだそこまでとがっていない。
できれば、町屋良平のほかの小説もあわせて読んでみて欲しい。
上に挙げた2作品についても、読書会の中で言及されれば嬉しく思う。
特に『1R1分34秒』は『青が破れる』と一部地続きになっている小説なので、興味深く読めるのではないかと思う。
(山陽堂ブック倶楽部・ T.F)

【マグカップ商品名の訂正】
今月発売開始のお知らせをしました当店オリジナルマグカップのうち、
釣りをしているイラストレーションが描かれている方の商品名が誤って「孤島浪漫」となっておりました。
正しくは「孤島漫画」です。失礼いたしました。

来週のメールマガジンは8月3・5・7日の3日間に渡り、
今春の「山陽堂落語会」(延期)にご出演予定でした立川生志師匠・春風亭昇羊さん・三遊亭好二郎さんに登場していただきます。
今週も最後までメールマガジンお読みくださりありがとうございました。
本日の追伸は、「新しい生活様式 おばちゃんの声かけ編」の続編です。
3週間ぶりに訪れた家の近くにある"豆を売るお店"。
マスクを外して熱心に説明してくれたあのおばちゃんはどうしているのか。
(前回のおばちゃんとのやり取りについてはこちらの追伸でhttp://sanyodo-shoten.co.jp/blog/2020/05/2020528.html

それではまた来週のメールマガジンで。


山陽堂書店
萬納 嶺


追伸

「杞憂」という文字が入り口のガラスに浮かび上がっているようにさえ思えた。
ガラス越しに見るおばちゃんは独自の判断により、マスクなんぞはしていなかった。
(僕はそれでいいと思うし、店主それぞれの判断の是非についてここでは問題としない。)
ガラス戸を横に滑らせ入店する。
正面に並ぶ豆のなかから先日とは異なるふたつを選んで帳場へ持っていく。
「嫁さんにでも頼まれたのかい?」
前回と話の入り方が違うが、しかし。
「へー、自分で煮るの?はー、若い人が煮るなんて嬉しいよ」
この展開は、もしや。
それぞれの豆の煮方の説明が始まり、こちらが確信を得たころに予期していた言葉が続く。
「近所の退職したじいさんたちなんかも豆煮るようになってさ、」
そうそうそう、それでうまくできると?
「持ってきたりすんのよね!」
コントか?あるいは自分はいま夢のなかにいるのか?
一連のやり取りが前回(3週間前)とほぼすべて同じである。
ただ今回は、ひと通りのおさらいが済むと、おばちゃんの煮た豆が小皿に盛られて供されるという新展開があった。
昆布を早めに入れてしまうと溶けてしまうので、豆が八割がた煮えたところで豆に刺すようにして縦に昆布を入れるらしい。
甘く煮た大豆はつやがあって、ほくっとした食感。
とろりとやわらかくなった昆布と絡めて食べると、これがまた美味い。
「豆売ってる人間がうまく煮えないとね!」
にんじんなどの野菜とは一緒に煮ないというのがまたこだわりだと言う。(とにかく元気に)
このまま黙っていて良いものかと、良心?の呵責もあって、
今日が2回目であること、そしておばちゃんは前回も熱心に教えてくれたことを伝える。
「あぁそうだったっけね!」という、ちょっと思い出したとも、まったく思い出していないともとれる生煮えな言葉が返ってくる。
豆を食べ終え、また来ますと言って店を出ようとすると、
おばちゃんは「ありがっとーございまっしたー!」と、ぺこりとかわいく頭を下げた。
初めて耳にする音の区切り方に調子を狂わされながら店を出る。
(おかげさまで前回聞きそびれた豆の名を、今回もまた聞きそびれた。)

どうも毎回の体験がこってりし過ぎている。
今度はさらっと行って、さらっと買い物を済まそう。
そうは思いつつも、それはすべておばちゃんが決めることである。
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