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2018年1月18日
3階喫茶営業のお知らせの「追伸」シリーズ
昨年より、山陽堂に入社した5世代目のひとり(甥)が、
不定期に山陽堂書店3階で喫茶営業をしております。

なにしろ不定期なものですから、
希望された方にメールマガジンで営業日を配信させていただいております。
いつも、そのメールには「追伸」がついておりまして、
この度、それをブログに掲載してみてはどうだろう
ということになりました。

みなさま、お忙しい日々をお過ごしのことと思いますが、
ちょっと力をぬきたいなあ・・・、
と思われる方に読んでいただけるとうれしいと、
思っております。

メール配信を希望される方は本文に「メール配信希望」と明記のうえ、

sanyodo1891@gmail.comまでご連絡ください。


それでは、最新のものから遡ってご紹介させていただきます。 

2018年
【祖父のこと 1月11日配信】

peaceJPG.JPG

1月11日は山陽堂 三代目店主 和夫の命日で、31年前の今日亡くなりました。
和夫は僕の祖父に当たり、日にピース缶を二つ空けてしまうほどのヘビースモーカーでした。
ピース缶は50本入りなので、日に100本吸っていたことになります。
もうそれは必然的に、肺がんが原因で亡くなりました。
祖父は戦時中の話として、自分が生き残った経緯を書き残していて、
その内容や終戦直後の祖父の様子を聞くと、吸わずにはいられなかったのだろうと、
祖父を不憫にさえ思いました。
ただそれでも、たばこを吸っていなかったら、
もっと長生きをして、一緒に色んな時間を過ごせたかもしれないのにと思ってしまうのです。
生前を知る人から祖父の話を聞く度に、会いたい(会いたかった)気持ちは募るものの、
それがどうしても叶わないだけに、寂しくなってしまいます。

「というわけでね、(自分が)たばこを吸わないのは、自分の孫にさ、同じ思いさせたくないっていうのもあるんだよね」
と、以前友人に言ったところ、
「へぇ、いいじゃん」
と、アメリカンスピリッツを吸いながら、にべもなく返事をされました。

2017年
【山陽堂にいる男の人 12月16日配信】

FullSizeRender.jpgイラストレーション 石川恭子)

10月末から時々お店のレジに立つようになりました。
ご存知の方もいるかと思いますが、山陽堂は家族で本屋を経営しています。
ただ、単なる家族経営ではないといいますか、言わば"女系家族経営"なのです。
いかほどの女系かというと、
山陽堂三代目店主の祖父 和夫は姉一人と妹三人に囲まれた一人長男、
その祖父と祖母 幸江(現店主)の間に生まれたのは、長女と次女と三女、つまり三姉妹(次女が僕の母)。
その三姉妹から生まれた5世代目6人のうち、5人が女子という按配です。
6つ下のいとこが産まれたとき、
今度もまた女の子だと知った僕は泣き崩れたそうです。
というわけで、山陽堂のレジに男子が立つのは祖父が亡くなって以来30年ぶり。
昔からの常連さんはじめ、"山陽堂に居る男"を見慣れない方々から珍しがられています。
「あら、男性が立ってる」
「ここは女の人ばっかりなんだけどな、今日はどうしたんだい?」
「もしかして、お孫さん?」
「君は誰の子?」
などと声をかけられたり、何か言いたげな様子で、
終始「?」の表情のままお会計を済ませる方がいたり。
先日は、昔から来てくださっている男性のご注文を電話で受けた際、
「それじゃあ、お願いしますね。それで、あのー、最後に、何度も確認してしまって悪いんだけど、
(電話をしている)ここ本当に山陽堂さんなんだよね?」
間違いございません、大丈夫です。
これからは僕もどうぞよろしくお願いします。


【イルミネーションの思い出 12月1日配信】


昨日から表参道にイルミネーションが灯りました。
日中、電飾でぐるぐる巻きにされているけやきを間近で見ると、
調理糸で巻かれたチャーシューを思い起こしてしまうのですが、
日没後イルミネーションの灯ったけやき並木は日中のチャーシューがウソのように煌びやかで、
冬が苦手な僕の気持ちを少し明るくしてくれます。

小さなときから目にしてきましたが、
強く印象に残っているのは高校3年生のクリスマスの日。
大学の付属校に通っていた僕は、受験勉強に追われることもなく、
同じように時間を持て余していた同級生と、うちでクリスマスっぽい夕食を食べていました。
原宿駅からうちに来るまでに数多のカップルを目にしていた僕らは、
互いに
「なんでお前となんだよ」
と心に思い、表情に浮かべ、結局言葉にして投げ合っていました。
その後、黙ってケーキを食べていた僕らは、
どうしようもなく居たたまれなくなってしまい、
母親が友人からもらったという、
「何でそこに落ち着いたの!?」
というデザインの白いトレーナーと、
それと同じくらい疑わしいセンスのトレーナーを押し入れから引っ張り出し、
青いジャージのズボンを二つ用意して着替えました。
お互いトレーナーをズボンの中に強めにインして、ママチャリ二台に跨って外に出ました。
僕らは人でいっぱいの表参道のヒルズ側の方を、
なるべく人目につくようにと立ち漕ぎで一往復しましたが、
誰の目にも留まらないことがわかり、
「帰るか」と言って帰宅しました。

ジングルベルな雰囲気にそぐわない悪意ある所業により、
幸せに満ちた彼らの気持ちをちょっとばかしシラけさせようという思惑は、
こちらが何倍もダメージを受ける結果となって返ってきました。
うちに戻ってから残りのケーキを食べ、
泊まっていく予定だった彼は自分の家に帰ることになりました。
彼を駅まで送ったあと、
もう一度見に行ったイルミネーションは、ほんとはとても綺麗でした。

【10年ぶりに 10月27日配信】

 koujienJPG.JPGのサムネール画像

来年 2018年1月、岩波書店の広辞苑が10年ぶりに改訂され刊行されます。
今日はこれからその刊行発表会に行ってきます。
長野善光寺のご開帳くらい滅多にない機会なので、どんな様子なのか楽しみです。

今回改訂された『広辞苑 第七版』に新たに加わった語彙は1万語で、
それまでのものと合わせて全25万語(常用されている横文字含め)になるそうです。
言葉ってたくさんあるんですね。
僕はその人が書いたり発したりする言葉に魅力を感じることが多いような気がします。
綺麗な言葉だったり、珍しい言葉だったりということではなく、
その言葉が「その人の言葉」になっているときに心動かされるようです。

ある人が「桜の蕾もまだかたいうちに」という言葉を口にしたことがありました。
僕はその言葉を聴いた瞬間に心奪われて、すっかりその人のファンになってしまいました。
いまもこうして書きながら、螺旋階段の格子越しに聴いたその言葉と声色が蘇ってくるくらい、
僕にとっては強烈な体験でした。

あと、いま久しぶりに中島らもの「ぼくがすきな まちをすきな きみがすき」
というコピーをどこかで見て、目が離せなくなったことを思い出しました。
まったくそんな柄じゃないんですけどね。

【商人なのかしら 10月19日配信】

cofee.JPG

先日、喫茶営業をしている日に、本を買ってくださった方が
「この辺で本を読めるような喫茶店はありますか?」
とレジの伯母に訊いていました。
ちょうど3階から降りてきた僕はその場に居合わせ、
伯母と目が合いお互い同じ表情になってしまいました。

お客様はかつて青山にあった喫茶店の名前を挙げ、
そういった落ち着いたところがあればと話し、
伯母と僕は近辺のお店をいくつか勧めました。
そしてそれから、(意を決して)今日は山陽堂3階の喫茶も営業していることを伝えました。

その方は
「せっかくの営業日だから」
と言って3階まで上がってくださり、
ゆっくりと珈琲を飲みながら本を読み、時折僕とも話をしながら、
最後に嬉しい言葉を残していってくれました。

その日の営業後、
「断りにくくしたら悪いと思うと、勧めにくくてさぁ」
「そうなんだよねぇ」と、
伯母とレジでの出来事を振り返りました。
いま思うとまるで商人とは思えない会話だなと、反省している次第です。






最近の記事
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・山陽堂は創業126周年を迎えました。
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・『人が行き交う場所。』 -the catcher in the LIVERARY今村直樹となかまたちのブログから-
・44年前の今日。
・夏葉社さんのこと
・川崎さんの家が跡形もなくなってしまった。
・大きな絵本と写真で知る「子どもたちの命を守る手洗い〜アフリカ・ウガンダでの取り組み〜」
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